不知火家メイド隊 14
第二章
キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
「ハイ、以上で授業を終わります」
「ハ〜やっと終わったよ!」
「オイ!この後ゲーセン行かねえ?」
「俺パス」
教壇の先生がそう宣言すると同時にクラスメイト達は、解放感から口々にお喋りを始める。
「じゃあな!恭介!気を付けて帰れよ!!」
「ああ柴犬も怪我にだけは気を付けろよ!」
「オウ!!」
そう言うと柴田は部活の為教室を出て行く。
「恭介くん!一緒に帰りましょう!!」
舞葉は何時ものように恭介に声を掛ける。
無事に恭介を屋敷まで連れ帰る事も、不知火家メイド隊のメイドにとって仕事の一つだ。
他のクラスメイト達と違って、彼女たちにとっては、今だ任務の真っ最中なのだ。
「うん!・・・アレ!シェイラは?」
何時もなら舞葉と同じく学校での警護担当メイドであるシェイラも彼を呼びに来ているハズなのだが。
「シェイラさんは、用事が有るそうなので早退致しました。十六夜隊長からは、代わりの警護担当メイドを送るので、申し訳ございませんが今日だけは、Bポイントから車でご帰還下さいとの事です」
「ふ〜ん・・・まあ良いか一日位楽しても大丈夫だよね・・・」
こんな事で駄々を捏ねるのも大人気無いと思い、恭介は彼女の指示通り車での帰宅を了承した。
「でも、用事ってなんだろう」
指定された場所で自家用ベンツに乗り帰宅する恭介は舞葉の膝枕してもらい。
シェイラの用事が何なのか気になり少し心配になる。
「まさか、昼間のことかな。でも、あれは不可抗力だからシェイラが気にする必要ないのに…」
「恭介様、大丈夫ですよ。お屋敷に帰ればシェイラさんは出迎えてますわ」
「そうだね…舞葉。帰ったらシェイラに甘えよう〜」
シェイラが帰った原因は昼間の体育の一件と気づく恭介は気にする。
そんな恭介を舞葉は『大丈夫です』と優しく言う。恭介はほっとしたのか帰ったらシェイラに甘えようと決めた。
同い年だが、シェイラと舞葉は恭介にとって友達でもあり姉のような存在でもある。
恭介の身辺警護を任務とする遊撃隊副長であるシェイラは、幼い頃より最も身近で彼を守り続けて来た。
現在の遊撃隊副長の地位も、彼女が十四歳の時誘拐犯から恭介を命懸けで守った事を評価され、与えられた地位なのだ。
恭介にとって彼女は、不知火家メイド隊のメイドたちの中でも、特に信頼の厚い側近中の側近といえる。
「ただ今〜」
「「「「「「「「「「「「「お帰りなさいませ!!恭介様!!」」」」」」」」」」」」」
舞葉に先導されリムジンから降りると、不知火家メイド隊のメイドたちが彼女たちの主人を出迎えてくれる。
「うん!ただ今みんな!!・・・・アレ?どうしたの真理香?確かお爺さまに呼ばれてしばらく留守にするハズじゃなかったの?」
恭介は出迎えのメイドたちの中に此処に居ない筈の女を見つけ目を丸くした。
「ハイ!坊ちゃま!大旦那様の要件は一通り目途が付きましたので、一足早く帰宅させていただきました」
彼女の名前は朝霧真理香(アサギリ マリカ)元は恭介の乳母であり、現在は不知火家メイド隊で恭介の日常生活の世話を行う庶務隊の隊長をしている。(舞葉の上司)
早くに両親を事故で失った恭介にとって、彼女は母親も同じ存在であり、不知火家メイド隊のメイドたちの中で、恭介が最も信頼を置くメイドである。
そして彼女はメイドたちの中で、唯一恭介を掣肘出来る権限を祖父である謙介から与えられている。
そんな彼女だったが、その有能さと元は祖父である不知火謙介のメイドだったという前歴から、謙介と恭介のパイプ役として時々謙介の指示で動く事がある。
今回も謙介の指示で、部下である数人のメイドたちを連れて出張に行っていたハズだった。
(因みに彼女は、メイドたちの中で唯一恭介の事をご主人様や恭介様では無く坊ちゃまと呼ぶ)