痴漢 2
そのまま何事もなかったみたいに授業は再開されて…―
キーンコーンカーンコーン…
「―…はい、それじゃあ今日の授業はこれまで」
チャイムが鳴るとすぐに佐野先生は颯爽と教室を後にしてしまった。
…佐野先生…呆れてたかなあ…
またしても教科書を片づけることなく物思いに耽ってしまう。あーほんとにわたしのバカバカ!なんでよりによって佐野先生の授業で……泣
佐野先生の授業だけは入学してから今日まで、一度だって不真面目に受けたことなんて無かったのにぃ!!あぁ!幻滅されちゃってたらどうしよう……。せっかく足繁く数学資料室に通って名前と顔と覚えてもらったのにぃぃ!
佐野芳明先生。28歳独身の私立中学数学教師。…わたしの憧れの人。
そして、私は家に帰るために駅のホームで電車が来るのを待っていた。
(あ。佐野先生だ。佐野先生も電車で帰るのかな。)
電車に乗ると誰かが私の胸を揉んできた。
(や、やだ。痴漢!!)