同級生 29
「う…、でも。」
悠太は、ゆきのコトを追う自信も資格もない様な気がしてその場をなかなか動けない。
「あ─…、何やってんのよ。ゆき、もう見えないじゃないの。」
溜め息をつきながら美佳は言う。
そう、悠太がモタモタしている間にゆきの姿が視界からなくなっていたのだ。すぐ追い掛ければ間に合ったのだが……。
…そのまま横たわったまま悠太は顔を右腕で覆い、頬には涙さえ見られた
「…ち、ちょっと!本当に大丈夫!?」
心配してくれる声が今の悠太にはかなりつらい物だった…
『…変態の烙印…ゆきに嫌われた…うぅ…』
…その頃ゆきは…
「…とっさに投げちゃったけど…」
…平気かな…下コンクリで悠太受け身とれてなかったし…
…怒りとともに罪悪感にも似た後悔を感じていた…
そんなゆきの前に―‐
「げっ!た、田崎!!」
…タケが現れたのである「お、俺はだな、あの…その…えぇと」
そんなしどろもどろのタケにゆきはというと…
「ねぇ、悠太にも尋問したけど…」
その後に
あなたも暴露しなさいよ…とりあえず悠太の事だけでいいから…
と小さく低い声で付け足した…
目から殺気を放つゆきを前にタケはすぐさま屈した…
…悠太が覗いたのは一回だけな事…ゆきを他の誰より注目してたこと…そして覗いた次の日がキス事件だったこと…
…そう言うとタケはもう勘弁してと言わんばかりに逃走した…
「…覗いてサイズ見たから貧乳って言ってた訳じゃないの…ね」
…確かにあの日…キスした日から…私との対応変だったし…妙に顔赤かったし…
!?…もしかして、悠太が覗いたことで私を女の子として見てくれてる!?
そして覗いてくれたから私達つきあってるの…
覗きで付き合うなんて…結局体しか見てないじゃない!!?
「サイテー…」
悠太に対する怒りと嫌悪感で胸はいっぱいなのになぜか頬を涙がつたった。
「あれ…?なんで泣いてるのよ、あたし」
ぐっと我慢していた涙が溢れだしてきた。ゆきはその涙を抑えることが出来ず、側を誰も通らない物陰に隠れた。
「うぅ〜!ぅぁぁっ」
とめどなく流れる涙。胸が苦しくなり頭がジンジン痛くなる。
「ばか悠太ぁ…」
初めてあたしを本気で好きになってくれたと思ったのに……あんなにドキドキして嬉しかったのは結局あたしだけだったんだ……。
バカはあたしか…。
勝手に勘違いしてたんだ……。あんなに心配してくれてたのも、昨日何回もキスしたのも、全部下心があったからかも――。
それに気付かないで、浮かれて。
「ホント…救いようがないバカね…」
でも――
「体しか見てないならあんな優しいキスしないでよ」