♂と♀のラブゲーム 3
「な!?なんで私の名前を?」
治から勢なりフルネームで呼ばれたことを怪訝に感じ、舞は声を荒立てていた。
「ははは!そうすぐに食って掛かかんなよ。」
「べ・別にそんなつもりじゃ・・・」
舞は"またやってしまった"のだと、鼻頭をポリッと掻いた。
「プッ・・佐倉 舞ってホント面白いな・・勢なりビンタお見舞いしてくれたり、
俺が名前知ってるくらいで、大声上げてみたり・・」
「あ。昨日は申し訳ありません・・私の勘違いで・・」
「それ言いに来た訳か。昨日は驚いたよ。」
「ですよね・・」
「いやそう言う意味じゃなくて・・・俺に臆すことなくぶつかってくる奴いねーから・・」
「え?」
「だから興味持って、名前調べた」
「暇なんだ・・・」
「へ?・・はっはは!!そう言うところが佐倉 舞は面白いよ。
普通オレに興味持たれたって聞いた女子は、泣いて喜ぶぜ」
由美の顔が思い浮かんだ。
確かに彼女だったら、この男の言った通りのアクションを起こしそうだった。
「別に女子が全員、貴方に引かれる訳ではないし、それぞれに好みもあるは。
女子を一っ括りにして考えること自体、男の傲慢よ!
「ごめん。ごめん。確かに傲慢だよな。
俺ってガキんころからチヤホヤされて育ったから、一般常識に欠けるんだ」
「え?・・」
素直に詫びを入れてきた治に、舞は驚いていた。
「皆、俺を特別扱いするからさ。この学校でもな。」
舞は教室の片隅で1人、パンをかじっていた治の姿を思い起こしていた。
「友達は?」
「言うこと聞く奴なら五万といるぜ」
「言うことって?・・」
「俺がシャブってくれって言えば、野郎だって応じてくれるさ」
シャブルと言う単語が、そういうコトを意味するとは、舞は初め気付かなかった。
まるで昼にヤキソバパンを食べたとか、購買部でガリガリ君を買ったとか・・
そういう、まるで日常の普通のコトのように、それは治から語られた。
それが返って、これは嘘ではなく治にとってはごく当たり前のことなのだ・・と、舞には分かり、何故か寂しさを覚えた。
「そう言うこと、口にしない方がいいよ・・」
「え?」
「そんな悪ぶってみたところで、何も解決しないと思う」
「お前、何言ってんだよ?」
「きっと貴方の言っていることは本当で、男の子にだってHなことしてるんだと思う」
「だから何だよ?」
「そういうことヤルのは貴方の勝手だけど、それを平気で口にするのは、自分を卑下しているとしか思えない」
「な・なァにィ〜!?」
治は今までに無いほどの眼光で、舞を睨みつけた。
遠巻きではあるが、人だかりが2人の周りにできていた。
天草学園、理事長の孫であり、生徒会長の"天草 治"に食ってかかるオンナ・・・
・・・この学園にいられるのも今日までか?・・・
皆の瞳が哀れみと共に、"馬鹿な奴だ"と苦々しく笑い、舞に注がれていた。
「腐ってる・・・」舞はボソリと呟いた。
「え?・・・お前、今何て言ったんだ?」
治は下から舞を睨みあげ、一昔前のヤンキーのような姿勢で凄んでみせた。
そんな治に一歩も引くことはなく、舞は口を開いた。
「聞こえねーのかよ・・・アンタ、腐ってるよ・・・
アンタだけじゃねー、ここにいる皆、ドロドロに腐ってやがる!!」
「な!なんだと!」
顔を真っ赤に染め上げた治が舞の胸ぐらを掴み寄るが、
舞は治の股間に向け、膝を思いっきり蹴り挙げていた。