ガツン
「イタタタ」
「大丈夫？」
「あ、大丈夫です。」
「お寿司屋さんの看板に激突、何でこんなことに？」
「それは極度の緊張です。」
「何に緊張してるの？」
「愛さんに。」
「別に何もしないわよ。」
「あ、でも・・・・・・一緒に歩いているだけで・・・・・・」
「ふ〜ん。そうなんだ。」
「この激突も何かの縁ですからここにしましょう。」
「そうね。」
「こんばんは。」
「いらっしゃい!!!なんに致します？」
「あの・・・任せて良い？」
「分かりました。え〜と・・・・・・じゃあ大ネタ盛り合わせを二人分。」
ちょっと奮発してイカ、マグロ、平目にエビ、赤貝にアワビと注文を続ける。
「良いの？」
「あ、もしかしてお嫌いなものがありましたか？」
「そうじゃなくって・・・・・・その・・・・・・懐が・・・・・・」
「デートでそんな事気にしないほうがいいですよ。それにこの前伺った時はご馳走になりましたし。」
「何だか悪いわ。」
「きっとお育ちがいいんですね。」
「そう？何で？」
「そうじゃなかったらここは夢中で食べてますよ。」
「ヘイ、お待ちぃ。アワビです。」
「あ、どうも。」
「そう・・・・・・つまりお嬢様だって言いたいわけ？」
「あ、お気に触りましたか？」
「ううん。そうじゃないけど・・・・・・」
「あ、何か？」
「いいえ。今はお寿司をいただきましょう。そうだ大将。」
「へぇ、お嬢ちゃん？」
「ネギトロ。」
「あ、僕も。」
「ヘイわかりやした。」

「あーお腹いっぱい。美味しかったわ。」
「そうですね。ご馳走様。」
「お客さん満足ですかね？」
「ええ。満足だわ。」
「はい。とっても。」
「そうですか。」
「そうだ、お会計を。」
「合計金額はこちらになります。カウンターで。」
「はい。ご馳走様。」
「ありがとうございました!!」
「ゴメンネ。」
「え？何がですか？」
「後半は私が頼んだじゃない。」
「食べたい物があったならいいんじゃないですか？」
「君は優しいのね。」
「そうですか？」
「ええ。」
「さて、少し早いですが帰りましょうか。送りますよ。」
「そう。ありがとう。」

愛さんの家まで送ると愛さんが口を開いた。
「・・・・・・ねえ・・・・・・明日は家に来ない？」
「良いんですか？」
「元々は今日来てもらう約束だったし・・・・・・ね？」
「はい。喜んで。」
「じゃあ何時頃が良い？」
「愛さんは？」
「いつでもいいわ。」
「じゃあ午後１時でいいですか？」
「朝は忙しい？」
「午前中は短いですから。」
「そうね。じゃあまた明日ね。」