オーディション&オークション 9
「愛莉さん、なんか舞ちゃんの様子変だよね」
彩は愛莉の元に近づいて声を小さくして聞いた。
「そう?っていうかまだ私たち今日で2日目よ。まだお互いの事理解しきれていないんだし、まだ緊張しているんじゃないの」
「でもこうやって名前で呼び合う仲になったんだよ。もう少し心を開いてもいいのに」
「彩ちゃんはアイドルとしてやってたから、チームワークを大事にするのはわかるけど、私も舞ちゃんも一人で頑張ってきた所があるから、心を開くにはまだ時間がかかると思うよ」
「そっか・・せっかくこうやって3人で仕事をしているんだし仲良くなれると良いな」
と彩は舞を見つめながら呟く。
(舞の場合は昨日沢地さんとやったから、ちょっと意識してああいう感じになっているんだと思うけど、それよりも昨日の沢地さんの寂しそうなあの笑顔は何だったんだろ?気持ちよくなかったのかな。それともやり過ぎちゃったのかな・・。今までセックスした後、フェラすると大抵の男性は喜んでくれたのに、アナルにした後に舐めたから引いちゃったのかな)
愛莉は夕日に染まった空を見つめながら考え込んだ。
(沢地さんなら良いかなと思ってアナルヴァージンも上げたのに・・)
「愛莉さんまで考え事してる。二人ともどうしたんだろ?沢地さんなら知ってるのかな」
彩は二人の様子を見て沢地に聞いてみようかどうしようか、考え出した。
撮影は明日が最終日になる。彩はここまで沢地とはあまり会話を交わしては来なかった。
食事の後、女子3人で温泉を楽しんで部屋に戻る。愛莉と舞はそそくさと中に入っていってしまうが、綾は隣の沢地の部屋のドアを見て、少し考え事をしながらその場に立っていた。
するとドアが開く。
「あぁ、彩ちゃんじゃないか。どうしたんだい」
「あっ、いえ……」
「温泉に入って、ちょっと暑いなと思って夜風にあたろうとしたら、たまたまここを通りかかっただけで・・」
と彩は苦し紛れの言い訳をした。
「あっそうなの?どうだった温泉は」
「すごい大きかったですし、温泉の種類もたくさんあって楽しかったですし気持ちよかったですよ」
「ふふっ、楽しめたみたいでよかった」
「明日で撮影も最後だけど撮影はどうだった?」
「こういう撮影は初めてで最初は緊張しましたけど皆さん優しくて面白い人が多くて楽しかったです。それと食事も美味しかったですし。温泉も気持ちよかったですし」
「そっか。楽しんでくれてよかった。今回の撮影で愛莉ちゃんと舞ちゃんとは色々話を聞いたけど彩ちゃんとはあまり話をしていなかったから、今回の撮影もそうだけど今後どのように考えているのかなと思ってね。どうかな?少し話でもしようか」
「はい」
彩は沢地に招かれ部屋に入る。
(最初は強面で大柄な人で怖いイメージだったけど、撮影中はみんなをリラックスさせてくれて、とても気さくな人だったな。歳で言うとお父さん見たいかも)
「彩ちゃんは上京する前、地元でアイドルをやってたらしいね」
「はい。ダンスが好きで、家の近所にあるレッスンスタジオに通っていて、そこの一緒だった子たちと地域振興PRみたいなコンセプトのユニットでした」
「こっちで芸能活動とか考えてる?」
「うーん、今回の話が来るまでは、全然です」