世界の中心で平和を叫ぶ。 149
このミラージュとか言う怪人。和服の似合うキツネミミ怪人だとばかり思っていたが、何やら違うようだ。
ならばここは何も見なかったことにしておくのが大人の対応というものだろう。
「・・・あ、主殿、待ってくだされ・・・。拙者を見捨てないで〜・・・」
何やら小声で野太い声が聞こえたが迷わずスルーする。
「・・・では我々はこれで失礼する。
くれぐれも作戦部の連中を壊したりするなよ?」
「あら、ひどいことおっしゃいますね、夢さま。
私の能力ではそのようなことなどできないと知ってらっしゃるでしょう?」
「・・・(ぼそっ)」
夢は去り際に何かを言うと、足早にそこを後にした。
後に何があったか、啓太は知ることになるのだが、それはまた別の機会に話すとしよう。
さて、次に向かうは情報部。
それは新たな敵との戦いの始まりを予感させるキーパーソンとのファーストコンタクトの場所でもあった。
情報部を紹介するのは電脳怪人オート・バルキリー。
実は彼女、情報部の副部長であった。
「ここが私の担当する情報部になります。
活動内容は情報収集や情報操作、広報活動になります」
「・・・何かイヤな言葉が聞こえたんだけど?」
情報収集だけでも怪しいのに、情報操作と聞いては悪事をできるだけ避けたい啓太も黙っていられない。
ギロリと殺気のこもった視線でバルキリーを射抜いた。
しかしバルキリーは怯えながらも、懸命に反論する。
「い、いくら啓太さまの命令でもそれは聞けません。
この活動は私たちのみならず、世間の身の安全を守るために必要なことなんです」
「・・・オレたちのため?世間のため?」
夢のときとは違い、人助けのためと聞いて、啓太はきょとんとした顔になる。
「とりあえず、詳しいお話は中でします。
現場を見ていただいたほうが、啓太さまもよく御分かりになると思いますから」
こうして啓太たち一行は情報部の扉をくぐる。
中ではミイラ女やバラの怪人など複数の腕を持つ怪人たちが忙しそうに目の前のコンソールと向かい合っていた。
そんな中、ここの部長と思われる小さなコウモリの羽を生やした女性が、部下たちに指示をすばやく告げている。
「あの方がこの情報部の部長、『サキュバス怪人』リリス・ヴァンパイア様です。
今、お呼びいたします」
簡単に上司の紹介を済ませたバルキリーは、上司に愛しの主の来訪を告げた。
するとリリスは近くの部下に何事か命令すると、モデルのような足取りでこちらにやってきた。