世界の中心で平和を叫ぶ。 148
連続して現れた突然の闖入者たちに、啓太の頭脳は処理能力の限界を訴えていた。
なぜ、この巨大な怪人がこれほどまでに皆に恐れられているのか。
なぜ警備部の部長ともあろうものが、これほどまでにあっさりと拘束されているのか。
そもそもこの和服美人は誰なのか。
さまざまな疑問が浮かんでは脳内でいい感じに攪拌されていた。
そんな疑問に答えてくれたのは他ならぬ闖入者の1人、和服美人ことミラージュ・フォックスその人であった。
「このたびは部長のベンケイがご迷惑をおかけしてしまい、驚かせて申し訳ございません、啓太さま。
私の名前はミラージュ・フォックス。
未熟ながら警備部の副部長を勤めさせていただいていおります」
「は、はぁ・・・。これはどうも・・・」
優しい笑顔と気品ある丁寧な言葉遣いで謝罪と自己紹介をするミラージュに、啓太は面食らいながらも頭を下げる。
「ベンケイはあまりの怪力ゆえ、無差別破壊をしないよう、普段から私が見張っていなければならなかったのですが・・・。
啓太さまを待ちきれないこのバカが暴走して逃げ出してしまったのです」
「・・・はい?」
啓太は一瞬自分の耳を疑った。
目の前の気品ある和服美人からあるまじき言葉が聞こえたような気がしたからだ。
「ホント、力しか能のないバカの分際で・・・。
みっちり叱っておきますので、どうぞご安心ください♪」
「・・・あの。ミラージュ、さん?
何やら、その、聞いてはいけないような言葉が・・・」
「ミラージュ!今まで何をしていた!?
危うく啓太さまを傷つけるところであったぞ!」
啓太が再び聞こえた下品な言葉に、たまらず突っ込もうとすると、横から夢が割って入ってきた。
「申し訳ありません。全ては私の未熟さゆえに・・・」
「言い訳はいい!あとでこの処罰はきっちりと受けてもらうからな。
それともう1つ!仕置きとやらはここでするのか?」
「はい。こういうことはその場ですぐにしませんと、しつけになりませんので・・・」
「・・・そうか。では次の視察に参りましょう、啓太さま」
「はい?何で急に?」
「他にも部署はたくさんありますから」
「そ、そうだな!オレたちも啓太の大将の護衛があるこったし・・・」
「そう言えば情報部でリリスがおもしろい情報を仕入れたそうですよ?」
「うむ。では行ってみるか」
「・・・触らぬ神にたたりなし」
すると周囲の幹部怪人たちが口裏を合わせるかのように、夢に同調し始めた。
特にイブのセリフが気になったが、啓太もそれに倣うことにした。