世界の中心で平和を叫ぶ。 134
「それは世間が勝手につけたイメージです。
我々怪人のほとんどは、ある目的のために特定の能力を特化させたものなんですよ?」
あきれ果てた啓太の質問に、夢は至って冷静に答える。
その淡々とした様子に、啓太は自分の持つ怪人のイメージが音を立てて崩れ去るのを感じていた。
「まぁ、特定の能力に特化した怪人を補佐するために戦闘員がいるのですが・・・。
彼らも人間以上ではあってもそれほどステータスも高くないですから・・・」
次々と明かされていく悪の組織の内部事情。
悪の組織も悪の組織で結構いろいろ大変なんだな。
啓太は今まで持っていた悪の組織のイメージが近所の零細企業のような、身近な存在のように感じられた。
しかし今はいつまでもそんなことばかり考えていられない。
早く何とかしないと組織にいる怪人たちが路頭に迷ってしまうのだから。
啓太はそう思い直した・・・が、あまりに情けない怪人たちの未来予想図にどうにも気力が萎える。
「とにかく、私たちはこれからの生活を考えなければなりません。
そこで啓太さまの出番となるのです」
「オレの・・・?」
「はい。私たちは特定のこと以外にはとんと疎い存在です。
そこで啓太さまには、私たちの行動をいろいろ指示してほしいのです。
指示は大雑把なものでかまいません。
細かいところや難しいところは私たちで判断しますから。
ちょっとした建国SLGのようなものだとお考えください」
そう言われて啓太はホッとする。
いきなり資金集めや当座の組織の運営のことを聞かれたら、一般人の啓太にはとても答えられない。
「すでに組織に必要そうな部署は幾つか作っております。
私たち以外の幹部候補との顔合わせついでにご覧になっていただけませんか?」
「ん、わかった。ご飯を食べたらすぐに行こう」
啓太はわずかな逡巡すら見せずに即答した。
それは組織のトップとしての責任感から、などというありきたりな理由ばかりではない。
マンションで暮らしていたときから何かととんでもない行動で啓太の平穏を脅かしてきた夢のこと、まともな部署を作っているかが、まず怪しい。
決して各部署をまとめる怪人たちとお近づきになりたいとか、あわよくばご主人様特権でいろいろおいしい思いをしたいとか、そーゆー邪悪な思惑など、これっぽっちも!欠片ほども!存在していない。