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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 121

なのにアパレント・アトムはそれをしない。
さすがにネットワーク・フェアリーに手心を加えるようなマネはしてないが、周囲の人間たちへの配慮は片時も怠っていない。
怪人らしからぬ行動が疑問を呼び、ウリエルを不快にさせる。
そしてそれが致命的ではないにしろ、ミスを呼んでますます彼を不快にさせていく。
そのストレスが頂点に達した時、ウリエルはつまらなそうにつぶやいた。

「あー、もーいーや。つまんない。メンドくさいからさっさと終わらせよっと」

投げ槍な言葉とともにネットワーク・フェアリーの動きが変わる。
一切の回避・防御行動をやめ、全速力でアパレント・アトムの拠点を落とすべく走り出す。
そう、彼は飽きた。遊びに飽きてしまった。
だから、狩る。さっさと用を済ませて家に帰るべく、ネットワーク・フェアリーに命じたのだ。
コンマ1秒でも早く、アパレント・アトムを消せ―――と。
突然の特攻に戸惑いつつも、アパレント・アトム陣営も素早く迎撃に入る。
その攻撃はことごとく命中し、少なくない数のネットワーク・フェアリーを行動不能に追い込んだ。
しかし行動不能にしても敵の動きは止まらない。
致命傷になろうがなるまいがお構いなしに前進と攻撃を続ける。
そしてついにネットワーク・フェアリーの1体が防衛ラインにたどり着く。次の瞬間。

―――カッ!

激しい閃光と爆音が包み込み、あたり一帯が吹き飛んだ。自爆したのだ。
アパレント・アトムの怪人たちはそこを攻められてはたまらないとばかりに急いでそこに戦力を回すが、ネットワーク・フェアリーはそのスキを逃さない。
次々と防衛ラインにたどり着くなり自爆して果てていく。
中には行動不能になっているものまでもが、芋虫のように這いずって前進を続けている。
もし連中が防衛ラインにたどり着けば、即座に自爆するのだろう。
もはや彼女らを生かしておくなんて生ぬるい考えは通用しない。
しかし啓太の命令は死亡厳禁。敵だろうと味方だろうと死ぬことは許されない。
この矛盾した状況を乗り越えるため、指揮官は部下たちにすぐさま次の命令を下す。

「各員装備を実弾銃からスタン装備に切り替え!バッドステータス付与型の怪人を前に出して裏切り者たちの動きを止めろ!」

なるほど、力でダメなら小手先の技で動きを止めようという考えらしい。
確かに素のままのネットワーク・フェアリーなら効果のある作戦だ。
だが相手にはウリエルから与えられた全身スーツで強化している者もいる。
さすがに彼らにまでその作戦が通用するとは考えが甘すぎではないだろうか?
もちろんそんなこと、言われるまでもなくわかっていた。
だから続けて部下に次の命令を下す。

「それと本部に緊急連絡!敵は戦術を損害無視の特攻戦術に切り替え!
 現戦力では戦線の維持は不可能!早急なる増援、もしくは撤退許可を要請しろ!」
『・・・っ!』

その言葉に怪人たちの顔に無念と悔恨の色が浮かぶ。
うすうすわかっていたとは言え、それを言葉にするのとしないのでは全く違う。
ましてここは啓太のためにと苦労して手に入れた拠点だ。それを捨てるなど啓太への背信行為に近い。
できることなら、目の前の裏切り者を1人残らず殺してやりたい。
自分たちが味わっている以上の苦痛を与えてやりたい。
しかし啓太の命令でそれはできない。命令、命令、命令。
有能にして愚鈍な怪人たちは、それでも最愛の主人のためにと持てる限りの力を尽くして最善の手を模索し続けた。
たとえその先がなくてもかまわない。啓太を幸せにする。それだけがアパレント・アトムの怪人の使命なのだから。
――――

その頃。すっかり問題の現場から遠ざけられる形となった啓太はと言うと。

「ふんむっ・・・!んむ、んぐ・・・ンぁッ!?」
「・・・ぷうっ。すまない、操。おかげで頭が冷えた」
「いえ。私などのつたないキスを必要としていただいただけで、十分に幸福です」

とある民家の屋根の上、腹から上半身だけ出てきた操と情熱的なキスを交わしていた。
別に変な気持ちになったから、発散しているわけではない。
リトル(直純)のときと同じく、冷静さを取り戻すための儀式のようなものだ。
普段からハーレムの王も真っ青の、ただれた生活を送ってきた啓太にとって、もはやキスなど心を落ち着かせるための手段の1つにすぎなくなっていた。
今、彼は基地に通じる所有店舗の1つの前までやってきていた。

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