幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 47
そして今も、『ロリで巨乳な巫女さんとやりたい』というマニアックな客の願望を取り込み、それに合わせて姿を変化させていたのだった。
ちなみに相手が『金が欲しい』と思っていると、高価そうな宝石を身に着けたセレブ風の女性になり、『あいつぶっ殺すっ!』と誰かを憎み殺したがっていると、ものすごい形相をした鬼女のような姿になったりする。
さらに願望次第では、アイドルやアニメキャラ、男にもなれたりする。
この能力を駆使し、八侘は仲間内では一番の稼ぎ頭になっていた。
やがて八侘の変化が完了した。
燈色の瞳と浅黄色の長髪というのは元のままで、見た目は10歳ぐらいだが、胸はFカップぐらいとアンバランスな大きさの少女の姿に八侘は変化した。
服装も浴衣から緋袴の巫女装束へと変化している。
顔立ちも八侘の面影が残っているので、『妹です』と言えば誰もが信用するだろう。
「最近多いわね、この手のお客さん」
これも時代の流れか……と考えながら、八侘は客の待っている部屋へと戻っていった。
「誰だっ!」
備品倉庫らしき部屋で待っていた白スーツの男がドアの外に人気を感じ、上着の中に手を入れる。
しかし、ドアを開け入ってきた巫女装束の少女を見ると、緊張を解き手を懐から出した。
「へへへっ……待ってたぜ。注文どうりみたいだな」
男は八侘が呼んでくると言った少女娼婦が来たのだと思っていたが、この時部屋に入ってきたのは紅夜叉であった。
(待ってた?………しまったっ! 待ち伏せかっ!?)
紅夜叉の方も、男の言葉の意味を誤解して受け取め、思わず身構る。
そんな紅夜叉に男が近づいて行くが………
「んっ?」
すぐ近くで立ち止まり、男がジロジロと紅夜叉を見る。
「なっ、何だよ」
「お前……」
どこか不満げな顔で、男が答える。
「全然、胸無いじゃねぇか」
ボゴォッ!!!
「余計なお世話だぁーーーっ!!!」
紅夜叉の鉄拳が男の顔面に減り込む。
「グハッ!」
男の体が崩れ落ちるのと同時に、ドアが開かれる。
「お待たせしましたー………って、あれ?」
部屋に入ってきた八侘と紅夜叉の目が合う。
「あっ…」
しばし、辺りを沈黙が支配した。
―――10分後―――
「ううっ……」
「大丈夫ですかお客さん」
男が目を覚ますと、目の前に心配そうにこちら見ている八侘の顔と、その後ろには腕を組んで立っている紅夜叉の姿があった。
「んっ、俺は何を…」
「忘れたんですか? 私達が入ってきたとき、慌てて駆け寄ろうとして転んで気絶したんですよ」
我ながらいいかげんな嘘だとは思いながら、八侘は何とか誤魔化そうとする。
「転んだ? いや、そっちの娘に殴られたような」
「まさか。あんな小さい子に殴られても、大の大人が気絶したりするわけないでしょ」