オッパイストーリー! 5
「綺麗…か…」
男にそんな事を言われたのは少なくともジャダ支部に来てからは初めての事だった。
エイリアスは美人なのだが、どこか男を寄せ付けない冷たい雰囲気があり、前にいた支部の同僚の男達からは『高嶺の花』と敬遠されていた。
言い寄って来る男と言えば下品なナンパ野郎だけ。
一方ジャダの街は田舎ゆえ人々は純朴で、魔術師としての自分を敬ってくれている。
だが当然、異性としては見られていない。
現状に不満は無い。
しかし、彼女の中の女としての部分は何か物足りない物を感じていた。
無意識の内に、彼女の手は股間と胸へと伸びる…。
「…ハッ!!わ…私は何を考えてるんだ!?魔術師は街の平和を守る事だけを考えていれば良いんだ!私までヘーデルの田舎ボケが移ったか…しっかりしろエイリアス!」
我に返ったエイリアスは顔を赤らめながらピシャリと自分の頬を叩いた。
ヨシュアが支部の建物を出るとアースラが待ちくたびれた様子で待っていた。
彼女は白いワンピースのような服を着ていた。
「遅かったではありませんか、ご主人様」
「うん、ちょっと色々あってね。それよりお前、その服どうしたんだ?」
「裸では目立つので、そこの服屋で買ってきました」
「支払いは?」
「ご主人様のツケで…」
「マジかよ!?勝手に何て事するんだ!!」
ヨシュアは怒った。
「も…申し訳ありません、ご主人様。でもさすがに裸のままでは目立ってしまって…」
アースラは少し涙目になりながらヨシュアに謝った。
出会った時には偉そうな態度で自らヨシュアの上にまたがり腰を振っていた彼女が、ずいぶんな変わりようだ。
イカされた男には生涯、従順に仕える…淫魔とはそういう生き物なのである。
「ま…まあ良い、もうこんな事はするなよ。それより飯でも食いに行くか」
その可愛らしさに思わず許してしまった。
「は…はい!」
アースラは嬉しそうに顔を赤らめてヨシュアの腕に抱き付く。
二人は連れ立ってジャダ唯一の食堂にやって来た。
ここは安い上に味もなかなか美味いと近隣の街でも評判の店だった。
「いらっしゃい、ヘーデルさん!あら、そちらの方は…?」
出迎えたのはこの店の看板娘、アンナ・バーレンだ。
栗色の長い髪を三つ編みにした、頬にソバカスのある可愛らしい美少女である。
彼女も爆乳…とまではいかないが充分に巨乳の部類に入る大きな乳房をエプロンの中にキツそうに収めている。
「こんにちは、アンナ。こいつは…その…俺の親戚の娘だよ」
ヨシュアは適当にごまかした。
「へぇ〜、そうなんだ。ヘーデルさんにこんな綺麗な親戚さんがいたなんてねぇ…ちょっと意外かも」
「微妙に失礼だな…」
二人は案内された席に着き、ヨシュアは一番安い料理を二人前注文した。
本当はメニューを見せて『何でも好きなのを頼め』などと言えればカッコいいのだが、新米魔術師の安い俸給ではそんな真似は無理だ。
厨房の方へ去っていくアンナの背を見ながらアースラはヨシュアに小声で囁いた。
「ご主人様はあのアンナという娘の事が気になっているようですね」
「な…何!?いきなり何言い出すんだよお前?」
明らかに動揺している。
どうやら図星のようだ。
「でもあの娘の方は特にご主人様に対して特別な感情は抱いている訳ではないようですね」
「はぁ…そうなんだよなぁ…」
ヨシュアは頬杖をつきながら溜め息混じりに言った。
「何を悩んでいるんですか?好きならいっそ強引に押し倒して犯してしまえば良いではありませんか?」
「あのなぁ…お前ら淫魔と一緒にするなよ。人間の性交には“手順”ってものが必要なんだよ。それは凄く複雑で面倒臭い作業だ。だがそれを省くと“強姦”と言って犯罪になる」
「知ってます。でもご主人様、今のご主人様は大丈夫なんです」
「はぁ?」
「ご主人様は淫魔である私と交わる事によって淫魔の力を手に入れました。異性を魅了する力です。今はまだ自覚が無いかも知れませんが、ご主人様はどんな貞淑な女も発情したメス豚にしてしまう能力を備えたのです」
「し…信じられないなぁ…」