生徒会日和。 92
そんな泥沼の家になんか僕だって居たくないよ。
姫さんの境遇を思い、僕は悲しくなった。
「ひょっとして姫さんって寮生活?」
「そうだよ。」
相変わらず小声で話し合う僕たち。
うちの学校には、事情のある子や実家が遠い子の為の寮がある。
さくら荘っていうらしいけど、去年まで桜樹台が女子校だったから完全に女子寮で、まだ男子寮は無い。
泥沼といえば、僕は姉さんとはうまくいかなかったけど、両親は最後まで仲が良かった。
2年前に父さんが亡くなったけど、最後までお互いを愛しているのは僕にもわかった。
…それだけに、父さんが亡くなったときの母さんの悲しそうな表情は今でも覚えている。
あれから母さんはいっそう仕事に力を入れている気がする。
「樹が気を使ったり、嫌な思いをさせたくない」と言って再婚は一切考えていないようだが、それは母さんが今も父さんを愛している表れなのだと僕は思っている。
食事と会話と盛り上がる?僕らを見ながら、あやせさんがニコニコとして
「いいわねぇ。あの頃が懐かしいわ」
「あやせさん、そんなに変わんないのに」
突っ込む茜さん。
気になったので聞いてみる。
「あの頃って?」
「あやせさん、桜樹台のOGなんだよ」
代わりに茜さんが答えた。
そうだったのか。
そういえば、あやせさん、見た目うちの姉さんと歳が近そうに見える。
…もしかしたら、知ってるのかもしれない。
いろいろ話を聞いてみたい。
―気がつくと、テーブルの上の皿に食べ物は残っていなかった。
「ふー、満腹満腹」
歩さんがお腹をさする。
…全然膨れてませんよ?ホント、どこにその栄養入っていくんですか。
「デザートもあるけど」
『いただきまーす』
歩さん筆頭に、茜さん、姫さん、梓さん、小坂井姉妹が声を上げる。
…甘いものは別腹、まさにこのこと。
あやせさんが持ってきたアイスクリームを美味しそうに食べる別腹女子。
よくお腹に入るもんだと感心してしまう。
(それでいて皆さん太らないんだよなぁ)
「ふー、食べたらお昼寝ね」
などと言い出す歩さん。貴女は幼稚園児ですか。
…まあ、お昼から海、ってのも考えにくいし…海で遊ぶなら明日か。
「今は夏祭りの真っ最中なの。夜には花火大会もあるし」
とあやせさんが言う。