生徒会日和。 160
僕は生徒会に入ってからの歩さんしか知らないけど…以前の歩さんはどんな人だったんだろう。
今度機会があれば聞いてみよう。
「さぁ、あんまり彼女をほったらかしにしておくものじゃないわよ。あの子、部屋にいる筈だから。」
「はい、分かりました。」
僕は立ち上がり、希さんに一礼して、階段に向かおうとした。
「あっ、樹くん。最後に一つだけ。」
「何ですか?」
「私は基本的にあなた達の関係を応援するつもり。だけど、さっきも言った様に『順番』だけは守りなさい。何だかんだ言っても社会的にはあなた達は『子供』なのだから。」
「はい…わかりました」
「頑張ってね」
希さんは優しく笑顔で言った。
歩さんが以前、学校の先生をしているって言っていたっけ…その言葉には温かさも、そして責任の重さも感じた。
僕は再び二階に上がる。
歩さんの部屋の前で一呼吸置いて、ドアをノックする。
「歩さん、入りますよ。」
返事はなかったが、僕はゆっくりとドアを開けて、中へと入っていった。
部屋の中には歩さんの姿は無い。
しかし、ベッドの上の掛け布団が大きくもりあがっている。
きっと歩さんはあそこだ。
僕はゆっくりとベッドに近づき、その中へ潜りこんだ。
「ひゃあっ!?」
正解だった。
歩さんは布団を被ってベッドの中にいた。
「ごめん…樹、なんか迷惑かけて…」
「?全然そんなことないけど…」
「そう?…ママ、たまにああいうところがあるから…」
「でも、希さんのこと、嫌いじゃないでしょう」
「うん…大好きだよ」
歩さんの顔を見ながら、希さんの10代の頃を想像してみる。
もしかして希さんも我侭で子供っぽくて、それでも愛らしい少女だったのだろうか。
…もうちょっとお話を聞いてみたいな、と思ってしまった。
でも、今はそういうときじゃない。
「ママは、樹のこと気に入ったんじゃないかな」
「そうなのかな?そうだったら嬉しいけど」