生徒会日和。 161
歩さんは、嬉しそう…というわけでもなく、焼きもち焼いてる、というわけでもなさそう。
「まあ、希さんからは、僕らがこれからどうあるべきなのか、一度話し合ってみるといい、って言われて」
「それは、決まってるよ」
歩さんはあっさりと言う。
「私たちは付き合ってる。私は、樹のことが大好き…離れることなんて考えられないよ」
「そう、だよね…」
僕はゆっくりと歩さんを抱きしめて、想いを伝えた。
「その気持ちは…僕も同じだよ。僕も歩が大好き。歩とずっと一緒に居たい。でも…」
「でも?」
歩さんは不安そうに答える。
「でも、想いだけじゃダメだと思うんだ。周りのみんなから祝福されるような、ちゃんとした人にならなきゃ。」
「うん…」
「だから、歩にはきちんと受験に取り組んでもらって、歩の夢に向かって頑張ってもらいたいし、いずれは僕もきちんと受験に取り組もうと思う。その上で、お互いがまだ同じ気持ちでいれていたなら…」
まだ何か言いたいことは残っていた、でも
「うん、頑張る」
歩さんはそれを遮って言った。
満面の笑顔で。
「僕も応援するから」
「樹のときは、私が全力で樹を応援する!」
「…ありがとう」
つられて頬が緩むのがわかった。
お互いに自然と顔が近づき、軽く唇を触れ合った。
そして、また笑いあった。
僕が帰ろうとする頃には歩さんはいつもどおりに戻っていた。
「すいません、お邪魔しました」
「またいつでも遊びに来てね」
希さんも笑顔でそう言ってくれた。
歩さんの表情を見て、いい結論が出たと思ってくれたのだろう。
帰り道の足取りは自然と軽くなった。
家に帰った後も、歩さんと携帯でやり取り…これもいつも以上に増えたかもしれない。
…
翌日。
いつもどおり教室で、自分の席に着く。
歩さんとは家の方向が違うので一緒に登下校することはできないが、今までに増して携帯でメッセージをくれるようになったのが嬉しい。
「おはよう、樹…朝からなんか嬉しそうねぇ」
「あ、おはよう…」
隣の席の女子が僕を見てくすりと笑う。
綺麗な金髪に碧い瞳…(だが、先ほどの言葉はもちろん日本語)
アリス・ウェインライト。
アメリカ出身で、うちのクラスにやってきた留学生。
ちなみに、ソフトボール部の助っ人として梓さんにスカウトされたようだ。