セックス学校 13
白衣を着た女の人が何かピストルの形をしたものに弾を込めて独り言をぶつぶつ言っている。
女「これを撃たれた人は・・。」
俺「あのー。お邪魔しまーす。」
女の人が後ろを振り向いて、俺を見た。
女「ん?君はだれ?」
「俺、いや、自分はいつき健吾っていいます、この部に興味あって」
その女の人は、ピストル型のものをテーブルに置いて、俺の方に向き直った。
「ようこそ。未来ガジェット研究部へ。あたしは葉加瀬千雨。君二年生なんだね」
「はい」
一応、制服には学年カラーを意味する小さいバッジがついているので制服姿なら学年が分かる。
「あたしも2年生だからタメ口でいいよ…椅子どうぞ」
葉加瀬さんは、理科室とかにあるような背もたれのない椅子を勧め、自らもそういう椅子に座った。
きれいな人だ。そして同年代には見えない。多分、大学とかの研究室にこの格好で居ても違和感がないくらい年上っぽい。
「女の人いたんですね…いや…いるんだね。男ばっかりかと思って」
「何で?」
「そういう説明をした人がいたので」
葉加瀬さんはちょっと笑った。
「この部の人じゃないでしょ。まあ、この部の内情はあまり知られてないからね」
俺「それピストルですか?」
葉加瀬「ああ、これ?これは人を殺すためのものじゃないわ。でも、あなたには教えない。
まだ正式な部員じゃないし。まあ、入部してくれたら教えてあげるけど。」
机の上に置いてある大きめの箱の中には発明品らしいものがたくさん入っていた。
「この箱の中は、発明品なんですか…なの?」
やっぱり、目の前の人がタメ、というイメージがなかなか持てない。
「そうよ」
「どんなものがある、の?」
葉加瀬さんは一呼吸置いた。
「やっぱり部外秘は多い。差し支えないものは、たとえば、これは…」
葉加瀬さんはパソコン外付けのスピーカーのような装置を出して、コンセントに入れ、しばらく待ってからそのコントローラーのボタンをいくつか押した。
よい香りが、漂ってきた
「うなぎのかば焼き!」
もう昼近くになっていることもあって、俺の腹にはかなり刺激のある香りだった。
うなぎが高騰して、昨シーズンから一回もうなぎを食べていないのだ。
「おいしそうでしょ」
「はい」
もう、よだれを飲み込むしかなかった。
「この装置は、何種類かの料理の香りを、別にそれが無くても再現できる」
「そうなんですか」
…そんなふうに、無いものを五感に再現できる、とすると、俺がこの学園に来てからの経験も実は現実ではない!なんてことは?!
「もしかして、無いものをあったように感じさせるような装置がもっとあるとか…」
葉加瀬さんは腕を組んだ。
「…ないではない」
俺は、俺が転校生であることと、今感じたことを、話してみた。
「…ここは部活。部活っていうのは、学園から予算が出ているの。だから、学園の方針に反するような発明品が、あるわけないじゃない」