戦争 12
真っ暗な世界の中、そこだけが光に照らされていた。
その中で僕は、今まで抱いた女性達とセックスをしていた。
みんなお腹を大きくし、僕の子供をお腹に宿し、嬉しそうに母乳の滴る、おっぱいを揺らす。
その風景を僕は、少し高い位置から見下ろしていた。
そこでセックスしている僕と、それを見守る僕。
不思議な感覚に包まれていた。
気が付くと僕はベッドの上だった。
どうやらまだ生きていられたようだ。
あれから何日経ったのだろうか、身体を動かそうとすると身体中が軋む。
そうだ…リニスはどうしてるんだ。
無事でいるのだろうか。
「あら、目が覚めたのね」
看護兵のお姉さんが僕に気付き声をかける。
ああ、ナース服のお姉さんはいつ見ても良いものだなぁ…
「今、先生呼んで来るから待っててね」
そういうとお姉さんは去って行った。
そして、少し経ってから医者のおじさんがやってきた。
「・・・ん。経過は順調のようだな。もう2〜3日も休めば、すぐに回復できるだろう」
「そうですか・・・。ところで僕と一緒にいたリニス隊長はどうなりましたか?」
自分のケガが大したことなかったのだ。きっと彼女も無事だろう。無事のはずだ。
僕は半ば祈るような思いで、担当医にリニスの安否を確認する。返ってきた答えは・・・。
「リニス隊長?ああ、彼女なら本国へ帰還となったよ」
「え!?痛ッ・・・!?」
突然の本国への帰還と聞いて、僕は自分のケガも忘れて思わず身体を起こしてしまう。
ぶり返した痛みに悶える僕に、担当医のおじさんや看護婦さんたちがあわてて介抱する。
でも僕には痛みなんてどうでもよかった。
本国に帰るためにはそれなりの手柄を立てるか、死体となるかのどちらかしかないのだ。
リニスには生き延びて、僕の子供を産んで幸せになってほしかったのに・・・!
猛烈な後悔の念にとらわれる僕に、担当のお医者さんは苦笑しながらこう言った。
「安心しろ。彼女が帰還したのは死んだからじゃない。妊娠が確認されたからだよ」
「・・・え?」
マヌケな声を上げる僕に、おじさんは『おめでとう』と言い残して立ち去った。
看護婦さんが微笑みを浮かべて見守る中、僕は必死に今言われた言葉の意味を何度も何度も咀嚼し続けた。
リニスが本国帰還?妊娠して?それはつまり、あの時の1発が命中しちゃったわけで。
いや、そんなことはどうでもいい。隊長は、リニスは。僕の子供を生むまで、この血なまぐさい戦場に来なくていいということ。
わずかな間かもしれない。でも彼女はその間、赤ちゃんと一緒に、確実に生きていられるんだ・・・!
それを理解した瞬間、身体からあふれんばかりの喜びが全身を支配した。
自分の女が生きていてくれただけでもうれしいのに、いつのまにか僕の子供まで宿していてくれてたなんて!
うれしい、うれしい、うれしい。うれしくてたまらない。
この喜びを他の誰かに伝えたくて仕方がないくらいだ。・・・と、僕の目に看護婦さんの姿が入った。
そうだ。この喜びを独占なんてしちゃいけない。
看護婦さんも、サマンサにも。みんなにこの喜びを分けてあげなくちゃ。
喜びのあまり、わけのわからない思考に陥った僕は、自分が入院中の身の上であることも忘れ、看護婦さんを押し倒した。
後に僕の女となる看護婦さん―――アメスさん―――との行為中、傷が開いてちょっとした騒ぎになったけれど、そんなことどうでもよかった。
ただただ、リニス隊長が無事で、僕の子供を産んでくれることが純粋にうれしかった。
しかしここは戦場。いつまでも喜びに浸ることなど許されない。
回復した僕はすぐ戦場に駆り出され、生きるか死ぬかの日々にまた戻ることとなったのだった。
そして僕が戦場に送られてから1年の歳月が流れた―――。