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セーラー服と歩兵銃
官能リレー小説 - 戦争

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セーラー服と歩兵銃 2

撃ち合いの最中カトウたち歩兵部隊は上陸戦に備えて海岸にあらかじめ構築されていた塹壕やトーチカ陣地に身を潜めていた。雨霰の如く降り注ぐ敵弾の中には当然(別に狙った訳ではないのだが)塹壕の溝やトーチカの銃眼に飛び込む物もあり、哀れ敵と砲火を交える事も無く爆死した兵もいた。

「…砲撃が止んだな」
カトウは塹壕から恐る恐る頭を出し、双眼鏡で海の方を見た。敵兵を満載した揚陸艦が海岸線を埋め尽くすように迫って来る。テキトーに撃っても当たりそうだ。山砲でも良いから二〜三門くらい残しておけば良かったのに…。
「カトウ三佐、先程の砲撃戦で我が方は兵力の約10%を失いました」
ハヤマ一尉が告げる。
「上等だよ。仇は俺達が取ってやる。戦わずして死んだヤツらの分までな。ハヤマ一尉、君はB中隊を率いて左翼陣地に展開しろ。俺はA中隊のキハラ二尉(中尉)と共に中央を固める」
「は!」
「サキタ二尉、君はC中隊を右翼に展開」
「は!」
「よし、行くぞキハラ二尉!キハラ二尉?」
「あ、キハラ二尉は先ほど戦死されました」
「何だと!?…分かった。ならばA中隊は俺が直接指揮を取る」

揚陸艦が着岸し、中から大量の敵兵をわらわらと浜に吐き出していく。しかしカトウは攻撃の命令を出さない。
「カトウ三佐、連隊長から通信です」
『カトウ三佐!!何をしている!?早く攻撃命令を出さんか!!』
通信機の向こうからカトウの上官である連隊長ホンダ一佐(大佐)の怒鳴り声がした。
「…まだです。敵は今の砲撃でこっちが壊滅したと思い込んで油断しています。敵兵が浜を埋め尽くした所で一斉射撃を喰らわせてやります」
先程までの砲撃戦とは打って変わって、海岸は不気味な程の静けさに包まれた。兵達は息を潜め、塹壕やトーチカの中にジッと身を隠している。その時

ズドオォ―――ン!!

一発の砲声が静寂を破った。大砲が残っていたのか…。だが浜はまだ半分も埋まっていない。揚陸艦を狙ったと思しき砲弾は命中せず、海の中に落ちて水柱を立てた。
「バカヤロウ!!誰だ!?撃ったのは!」
「あれは…連隊に一門だけ配備されている連隊砲ですね。おそらく連隊長が痺れを切らせて…」
「クソッ!!」
塹壕の壁に拳を叩き付けるカトウ。しかしもう遅い。
「仕方ない…攻撃開始!!」
「撃ち方始めぇ―――!!!」
たちまち激しい銃撃戦が始まった。
唯一残った連隊砲は敵の艦砲射撃で沈黙。おそらく破壊されたのだろう。ついでにあの無能の連隊長が死んでくれれば俺が後を継いでこの連隊を自由に動かせるんだが…とカトウは一瞬思ったが、すぐにその考えを振り払うべく頭を左右に振った。馬鹿な考えは捨てて今は戦闘の指揮に集中せねばならない。
戦況は明らかに我が方の旗色が悪かった。こちらは塹壕やトーチカから撃つのだから有利なはずなのだが、何せ敵の数が多すぎる。撃っても撃っても後から後から押し寄せて来て切りが無い。たちまち敵兵の死体の山が出来上がった。敵はその山を乗り越えて攻めて来て、まるで食べ物に群がるアリの大群のようにトーチカや壕を制圧していった。
「カトウ三佐、申し訳ありません!左翼陣地を制圧されました」
ハヤマ一尉が半分に減った中隊を引き連れて後退して来た。
「構わん、全滅されるより生きて戻って来てくれた方が助かる。俺達もここを捨てて下がろうと思ってた所だしな」
「すると…」
「ああ、こんな拓けた場所で戦ってりゃあ、数の少ない俺達はいずれ全滅する。後方の森林地帯に下がってゲリラ戦で敵を食い止めた方がよっぽど効率的だ」
「ですが、連隊長殿は許可してくださるでしょうか?方面軍司令部からも『死守せよ』との命令が出ていますし…」
「あの連隊長は絶対に撤退なんて許さないだろうなぁ…」
連隊長ホンダ一佐の性格を思い出してカトウは苦笑する。融通が効かなくて上からの命令には無条件で絶対服従する男だ。国防大学を優秀な成績で卒業したエリートらしいが、上官には持ちたくないタイプである。
「ちょっと借りるぞ」
カトウは何を思ったか、ハヤマ一尉の自動小銃を取り上げると、台尻で通信機を叩き潰した。
「あ!何を…!?」
通信兵が思わず叫ぶ。カトウはニッと笑って言った。
「通信機が破損し連隊司令部との通信手段を失った。現場の指揮官として戦線の維持は不可能と判断し、海岸の陣地を放棄して全員撤退を命令する」
「三佐、あなたという人は…」
ハヤマ一尉は半ば呆れ顔で呟いた。
「…命令違反です。発覚したら軍法会議モノですよ」
「ここで死ぬよりはマシだろう。ほら、銃返すぞ」
そう言うとカトウはハヤマに彼女の小銃を放った。

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