ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 790
…その後は夏子さんに任せるまま、運ばれてきたメニューを食べて楽しんでいた。
隣の新庄は美玲ちゃんが言っていたのとはうらはらに積極的にメニューに手を伸ばしていた。
無理しているような風には見えないし、前情報とは違う姿に面食らってしまった。
そんなにアルコールは飲まずに済んだ。
「匠くん、今日は家に泊まっていかない?」
夏子さんが言った。
そんな迷惑をまた掛ける訳にはいかない…
こないだの記憶は余り残ってはいないもんね;…
「いや今日は失礼させて頂きますよ、明日も仕事ですし…」
「あらぁ残念…それじゃあ私は主人に迎えに来て貰うから、新庄くんも今日はありがとうねぇ」
という訳で、まだイタリアンレストランで飲んでいる夏子さんを残して、僕と新庄は店を出た。
男2人、車に乗り込む。
「道わかるか?近くまででいいよ」
「あ、大丈夫です。覚えてますから…」
爽やかな外見とあいまって感じのいい好青年そのものだ。
「よく食ったなぁ」
「先輩こそ…結構飲んでませんでした?」
「まあ、あのぐらいならまだ大丈夫かな…」
こないだ夏子さんと飲んだ時のことを考えると、酒量は半分いくかどうかってところだからね…
「へぇ〜それならまだ飲み足りないんじゃありませんか?…」
「えっ?…そんなことも無いけど…」
「よかったら続きしません?」
「ふへぇ?…続きってお前、車はどうするんだよ?…」
「この近くなんですよ美玲の家…先輩だったら彼女も喜んでおもてなししてくれると思うんですよね…」
「い、いや、今日は遠慮しとくよ…これ以上呑むとさ…」
「そうですか?」
「ああ、何事も程々が一番だろ」
不思議がる新庄。あまり悟られたくない。出来れば知って欲しくないのが幸せだ。
昨日の今日で、美玲ちゃんの家に行くのはさすがに…しかも本命である彼氏と一緒に…
何とか新庄を説得して、家の近所まで来て、車を降りる。