ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 723
確かに普通では考えられない兄弟だよな…
ついこないだまで巧の存在すら知らなかった僕は、なんだか昼ドラでも見ているみたいな…どこか他人事のように思えてしまう…
「でも僕は、双子の兄貴がいることが分かって、凄く嬉しかったよ…」
あ…僕が兄貴ってことなの…か?
「双子に順番ってあるものかしらねぇ」
ゆかりさんが言う。
僕もよくわからないんですけど。
「まあ、僕の場合は、今まで育ててくれた母親と、血のつながりがないのが…」
「そうよね…それが複雑よね…」
「僕は、生まれて今まで父親の顔を見たことがないんで…」
巧は巧でそういうことがあるんだな…
僕にしてみれば、実の母親の鈴田美恵子とは会ったことが無いのだから同じようなもんなんだけど、育ててくれたお袋が代えがたい存在だから不満は無いな…
それにしても本当の僕の父親が誰なのか気になってしょうがないよ…
今まで育ててくれた親父が本当の実の父親なのか?…
それともやっぱり和彦さんなんだろうか?…
それとも、まだ会ったことも無い別の誰かだって可能性もあるんだよな…
休日のせいもあって、あっという間に青山家の敷地の駐車場まで着いてしまった。
ここはいつ見ても広大だ。
駐車場だけでも僕の家の何倍あるだろう。
ゆかりさんが車を止め、降りて和彦さんたちの待つ場所へと向かう。
こんなに緊張するのは、初めてかもしれない。
それにしても格好まで白の綿シャツにカジュアルなジャケット、下はデニムのジーパンと巧とそっくりなところはギャグみたいだ…
双子って、離れた環境で違う育ち方をしても、何かが通じているんだろか?…
「白鳥様お待ち致しておりまし……えっ?」
エントランスで迎えてくれた杏さんが一瞬固まるのが分かった。
その杏さんの反応を見て頭を上げたメイドちゃんたちも、皆が皆目を見開き言葉を失っていた。