ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 722
間も無くゆかりさんの車で青山家に向かうことになる。
「バタバタしちゃってごめんね」
「いえ…和彦さんの頼みでしたら」
僕と鈴田巧は後部座席に座る。
そこには微妙な距離感があった。
車はゆっくりと発進する。
栞を残してきてよかったのか?…と思いつつも、まあもう子供じゃないんだし…
いやいや子供じゃないから余計不味いんじゃないか?…と、思いを巡らせてしまう;
「仲がいいんですね…あの2人と…」
横の巧がさり気なく言う…
「あ?ああ…、1人は妹だから…まあ啓くんも義理の弟ではあるんだけどね…」
「どうしてもそういうことが羨ましいと思ってしまうんですよ…」
巧はジッと前を向いたまま言う。
「…何故?」
「僕は一人っ子として過ごしてきたし、これまでの人生、あまり友達も出来なくてね…ほとんど人と接することなくずっと孤独だった気がするんだ…」
そういうことか…
いろんな人から集めた情報によると、巧は決していい環境で育ったとは思えないもんな…
「大変だったみいだな…あっごめん、ちょっと調べさせて貰ったんだ…」
巧という存在を知ってからは、気がきじゃなかったからな…
「お互い様だ。僕も同じようなことさせてもらったよ…」
「僕のことなんて簡単に調べられたのか?普通の一般家庭にいたのに」
「何、方法はいろいろある」
鈴田巧はそう言って薄く笑う。
僕も普段こうやって笑うことがあるのだろうか。ちょっと気になった。
「二人には、いろいろな事情があったのでしょうね…普通じゃ考えられないものね…」
ハンドルを握りながら、ゆかりさんが言う。