ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 620
「鈴田巧は、子供の頃から思春期にかけての間、どこでどんな風に暮らしていたんでしょうね」
「そこも、気になりますね」
恋ちゃんは頷いてキーボードを叩いていく。
「スズタも大きな会社ですから、全国各地に別荘や静養地を持っています。会長の命令で都会に近いところには住んでいないとは思うのですが…」
「何処かの田舎ってことか…」
そういえば…美恵子さんは、お袋と一緒に親父の知り合いのどこかの田舎で出産したって聞いたよな…
それってやっぱ、宗次郎から身を隠す為だったんだろうか?…
「鈴田巧は養子ってことになっているんですよね?…」
「ええ‥戸籍から見ると、鈴田美恵子が海外留学から戻ると直ぐに引き取ったようだはね…」
「美恵子さんは、巧を出産した後に海外留学に出たんですね」
「そうなりますね」
とすると、しばらくの間鈴田巧を預かっていたのは誰なんだろう?
「匠さんもちょうど同じ時期にお生まれになったんですよね?」
「…鈴田巧の誕生日っていつだっけ?」
「それが…僕と同じ日なんだ…」
僕は何だか言ってはいけないことを言うように、口篭りながら小さく言った。
「え…?!」
香澄と恋ちゃんは同時に声を上げ、2人とも眼を見開いて僕の顔を見た。
「驚くだろ?…僕も初め聞いた時は耳を疑ったさ…」
「偶然に同じ日に産まれることはあっても…その2人がそっくりだなんてこと…ありえない。」
香澄は僕の顔を見詰めたまま、ボソリと言った…
「それって…双子なのでは…」
「そうですよね…そうとしか考えられません…」
僕の顔をじっと見つめて、香澄も恋ちゃんも口々に言う。
「そうだよね、僕もそれしか考えられなかった」
「匠さんのお母様か、美恵子さんのどちらかが、実は妊娠していなかったって考えちゃいけませんか?」
香澄は僕に尋ねる。