ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 596
うむ、さすが青山家。
屋上をラウンジにするなんて…財力の成せる業だ…なんて思ってしまう。
「専用とは言い過ぎたかな…僕に一声かけてくれたら誰でも使っていいんだけどね」
そう笑い飛ばす和彦さん。
…いや、そう言われても使えませんよ、普通は。
エレベーターに乗り込むと、和彦さんは点滅する階表示を見つめたまま話し初めた…
「夕べ澪から聞いたんだが…鈴田コーポレーションの跡取りは、君にそっくりなんだそうじゃないか…」
「あ、はい…」
夕べってことは…僕とセックスした後、澪さんは和彦さんと会っていたのか…
「彼女…鈴田美恵子さんに、君と同い年の子がいるとは聞いていたんだ…でも、そこまでとは私も思わなかったよ」
「ええ…僕もです…」
和彦さんは腕組みして考え込む。
エレベーターは屋上に着いたことを知らせ、扉が開く。
「うぁ〜!」
目の前に広がる光景に、話しそっち退けで僕は驚きの声を上げていた。
「どうだい?気に入ったか?…」
「は、はい!まるでジャングルじゃないですかぁ!」
「ははは!一応、天空の森をイメージして造らせたんだ…」
今日は確か快晴のはず。汗ばむぐらいの陽気だと天気予報では言っていた。
しかし、ココは屋上だというのに日差しの強さを感じない。
もしかしたら日の光をシャットアウトしているのか。
涼しく感じるくらいだ。
「まあ落ち着いて、座ろうか」
「はい」
中心にそびえる大木の下にあるテーブル。
そこに2人で向かい合う。