ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 580
ホワイト色で統一されたエントランス空間は、まるで映画で見た近未来の世界のようだった。
「なんか緊張しちゃうよな…」
僕はエリカちゃんの手を何気に取る。
「はい、母屋とは全くイメージ違うんですね。」
エリカちゃんは僕の手を振り払うことなく、それどころか握り締めてきた。
受け付けに立つお姉さんに、初めて利用する旨を伝えると、運動する時に着るウェアを貸すということで、裏の小部屋に案内される。
自分のサイズに合ったウェアを選んで、ロッカーで着替えるためエリカちゃんとは別れるわけだが…何かおかしい。
「…あれ?男女別じゃないの?」
「ごめんなさい…ここを利用なさる男性はご主人様だけしかおりませんので、あいにく男性用の更衣室は設けておりませんで…」
案内してくれた女性が申し訳なさそうに頭を下げた。
「あ、そうなんだ;…それじゃ僕は柱の陰ででも着替えるから、エリカちゃんは更衣室に行っちゃってよ…」
「そうですかぁ、それじゃプールで会いましょうねぇ!」
そう言ってエリカちゃんは更衣室に入っていく。
僕は少し離れた位置で服を脱いで着替える。
さすがに和彦さんだけの更衣室までは用意しないんだなぁ。
ウェアは普通の海パン。
会社の試験製作品のような薄地のものでもないし、ブーメランパンツのような面積の小さいものでもない。
これはちょっと安心だ。
ロッカーに貴重品を入れ鍵をかけ、プールへと向かう。
硝子張りの空間は温室のようだった。
四方には青山家の広大な敷地が見渡せ、天井からは陽の光が差し込み、水面をキラキラと輝かせている。
「まるでリゾートホテルみたいだな。」
僕は思わず感嘆の声を上げていた…