ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 486
「うぇえ?!…」
思ってもいなかったことに驚愕の声を上げ、僕はその場にへたり込んでしまう。
「やだぁ匠さんったらぁ〜そんなに驚くことじゃないんですよぉ〜」
「だ、だって!双子だぜ!そんな落ち着いてられないよ!」
「そうですよね…双子って遺伝みたいなところがあるみたいですもんね。匠さんの親戚とかに双子の人はいらっしゃるんですか?…」
「う、う〜ん…わからないな…」
まだはっきりとした確証もつかめていないし、香澄にはあまり言いたくないことだったので、ここで言うのは避けた。
…鈴田巧という男は、ほんとに僕の双子の兄弟なのか?
もしそうだとしたら、遺伝があってもおかしくはないけど…信じがたいというか、信じたくない思いもあって、頭の中は混乱する。
「2人分、頑張らなくちゃ…」
香澄派大きくなったお腹に手を当て微笑む。
僕もそれに続くように頬を寄せ、耳を宛がった…
「どう?何か聞こえますか?」
そう言われると、心臓の音が二つ重なって聞こえるような気がしてくる…
もしも僕が双子だったとしたなら、こんな風に小さな子宮の中で寄り添って、命を育んできたんだ…と感慨深いものがある…
僕は香澄を見つめながら、お腹にそっと手を当てる。
「そうだな…楽しみだな」
「はい」
「僕ら2人で、いや、みんなで、大事に、大切に育てたいね」
「はい!」
歴史は繰り返されると言われる。
僕は、まだ見ぬ新しい命に、不思議と自分を重ね合わせて見ていた…
普段よりもやけに長く感じられた平日が終わり、やっと週末がやって来た。
「どうだ?…一緒に行けそうか?」
眠気眼の香澄の頬にキスをしながら僕は聞く…
「はい…私も楽しみにしていたんですからぁ…」
「それじゃあ、杏さんにでも迎えに来て貰おうか?…」