ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 305
「どうしたの?こんな所で…」
「それはこっちの台詞ですよぉ〜、匠さんは香澄ちゃんに会いに来たんでぇすか?」
くるくるとした大きな目を見開く純ちゃん……可愛いじゃないか。
「いや、そう言う訳でも無いんだ…伊藤さんにスーツを貰ってね。」
服の入った袋を開けて見せる。
「へぇ〜匠さんってこんなの穿くんだぁ〜」
中から真っ赤なパンツを取り出す純ちゃん…
「ぅあ、いや;…そのパンツはオマケみたいなもんで…;」
ある種一番見られたくないものを真っ先に取るとは。
「しかし、こんなの、伊藤さんが持ってるとは」
「たぶんもらい物なんじゃあないかな」
「ですよねぇ」
純ちゃんはそれを取ってニヤァと笑う。
「匠さん、これを穿いて香澄ちゃ…いえ、お嬢様と…」
…そういえば貴女、さっきから香澄ちゃんの呼び方がおかしいですね。
「そんなつもりは無いさぁ;…今日はもう帰るところだぜ」
兄妹疑惑が晴れないと、やっぱり香澄ちゃんとヤル訳にはいかないもんね…
「あ、そうなんだぁ〜それじゃあ私に付合ってくれません?」
「付合うって純ちゃん、メイドの仕事は?」
「私…昨日まででここのお仕事辞めたんでぇすよぉ〜」
え!?
そういえば純ちゃんメイド服じゃなくて私服だし、さっきから香澄ちゃんの呼び方も…
「ど、どうしたの!?」
「ふふ、そんな心配なさらないでくださいよ。悪い理由で辞めるわけじゃないんですから」
「じゃあ、なんで…」
「私、プロの漫画家としてデビューすることになったんです」
「うわぁ〜凄いじゃないかぁ!おめでとう!」
僕は純ちゃんの手を思わず握り絞めた。
「子供の時からの夢なので、凄い嬉しいでぇ〜す」
「お祝いしなくちゃな!何か食べたいモンとかあるか?」
「それは今度ということにして、今日は男の匠さんにお願いがあるんです…」