ノーマンズランド開拓記 15
「ルーク様…撤退して頂けなければ思う存分戦えません…どうか退いてください…」
ジェシカは先住民達に視線を固定したまま静かにそう言った。
その顔は無表情で、その瞳はゾッとするほど冷たい…しかし外面とは裏腹に、彼女の内面は激しい怒りの感情で煮えたぎっていた。
それを感じ取ったのか、ジェシカを前にした先住民達も思わず怯む。
ルークは無力な自分が情けなかった。
ジェシカの言う事は正論だ。
いま自分がここに残っても、皆の足手まといになるだけなのだ。
「…解った、後を頼む!」
退くも勇気…ミシェルの助力を断り、自分の足で歩きながらルークは苦悶の表情を消す。
のたうち回る程の激痛だが、それを顔に出せば不安が周囲に広がる。
ここをジェシカに任す以上、ルークはルークがやるべき事をやらねばならない。
「ここはジェシカ隊に任せて撤退!!負傷者の救出を急げ!!生死不明の者も砦へ収容するんだ!!」
そう命じるとルークは悔しさを押し殺して仲間達に背を向けたのだった。
「さぁて…」
ジェシカはルークが安全圏まで下がった事を確認すると、先住民達を見てニヤリと笑った。
「「「…っ!!!?」」」
先住民達に緊張が走る。
彼らは各々の武器…石槍や石斧、弓矢を構えた。
だが間合いを取ったまま仕掛けて来ない。
あるいは戦士としての直感で察しているのかも知れない…自分達の目の前に居る(彼らからしてみれば)小さな女が相当な手練れである事を…。
ジェシカは言った。
「…お前達がどんな理由で私達を攻撃して来るのかは知らん…だが私達にも守るべき物がある以上、一歩も退く訳にはいかないんだぁ!!!」
「…△●□◆◎〓☆ーッ!!!!」
一人の先住民が甲高い声で何やら叫んだ。
来るか!?
ジェシカは剣を構える。
こうなったら一人でも二人でも良いから道連れにして果ててやる覚悟だった。
だが…
「退いていく…!?」
先住民達は海の波が引くが如くササーッと森の中へと退いていったのだった。
一方その頃、砦の中は別な意味で戦場と化していた。
「痛ぇ!!!痛えぇよおぉ〜!!!」
「頑張れ!もう少しだ!」
「先生!薬の数が足りません!」
「包帯もです!」
「…仕方ない!医薬品は重傷者に優先して使え!清潔な布を裂いて包帯の代わりにするんだ!」
次々と運び込まれて来る負傷者達に、医者と看護婦が走り回っている。
医師の数は少なく、約300名の開拓団に僅か5名。
看護婦(ここでは単に医師の助手をする女性、多少の医療知識は持ち合わせている)は10名前後。
医療従事者はそれだけだ。
ルークは医者に言った。
「うぅぅ…先生ぇ…早くこの矢、抜いちゃってください…」
「…いえ、そう簡単にはいきません。鏃(やじり)に“返し”が付いているので…つまり反対側を切開して引き抜かなければいけません…」
「せ…切開?……」
ルークは気を失った…。
結局、死者はそれほど多くはなかったものの、払った代償は大きかった。
それはこの一件で開拓者達の士気が挫(くじ)かれた事…。
中には泣いて祖国へ帰してくれと言い出す者達まで現れた。
さらに今後は警戒態勢の中で開墾作業を行わねばならない…つまり本来であれば開墾に宛てるべき人員を大幅に警備の方に回さねばならず、それは計画の相当な遅れを意味していた。
そして先住民との交渉が完全に不可能となった事…。
永久にとは言わないが、少なくとも今は心情的に受け付けられない。
ルークの傷は思ったよりも軽傷だった。
暫くは腕の動きに不自由するだろうが、これだけで済んだのは幸運と言うべきだろう。
だがルークの負傷にジェシカは静かな怒りを感じていた。
彼女にとってルークと言う存在は全てなのである。
恋とか愛とか忠誠とかではない。
まさしく人生の全てなのである。
『騎士たるもの、主君の盾となりお守りせよ』
幼い頃からずっと、父クラウスからそう言い聞かされて育てられてきたのだ…。
「…暫く陣頭指揮は控えて貰います」
砦の指令部区画にある石造りの風呂でルークの身体を洗いながらジェシカは宣言した。
ルークは1人で入ろうとしたが、ジェシカに“一個大隊をにらみ殺すような視線”で止められた。
ルークを脱がすとジェシカも裸になる。
純粋なアスファルティア人らしからぬやや濃い色の肌。
全身鍛え上げられているが、そのボディーラインは凹凸のハッキリした女性のそれであり、胸もすこぶる豊か。
容姿に関してもエリスとマリアの美少女姉妹と比べ、なんら見劣りしない。
そんな魅力的な年上の女性の裸体を前にして健康な青年の肉体(の一部)が反応しない訳が無いのであった。
「……ルーク様…」
「ご…ごめん……生理現象だから…」
ルークのペ○スは腹に張り付く勢いでビンビンに勃起していた。
思えばずっと船酔いに悩まされていた船上ではもちろんの事、上陸してからも予想外の出来事の連続で、性欲を感じる余裕など無かった。
…という訳で最後にヌいたのはもう一ヶ月以上前になるだろうか。
「まったく…真面目な話をしているという時に、何を考えているのですかアナタは…」
「面目ないです…」
ジェシカは頬を赤らめてソコから視線を逸らす…が、ふと思い直してソレに手を伸ばした。
「ジェ…ジェシカ…!?」
「フフ…せっかくですからルーク様のココも洗って差し上げましょうか、昔みたいに…ね♪」
「う…」
ジェシカの目がエッチな目つきになっている。
ルークはこの目に覚えがあった。
これも幼い頃…ライオネス伯領内にあった泉で水浴びしていた時、『ルーク様、大人のオチ○チンにしてあげるね♪』と言われ、ムリヤリ皮をひん剥かれた。