嫉妬-2
あーあかん。
考えだすとイライラする。
―――いや。それより、はよ部屋片付けんとヤバイ。
とりあえずエロ関係は絶対しまっとかんとあかん!
オカンはまだ当分パートから帰ってけえへんし、自分でやるしかない。
俺は激しい頭痛をこらえながら超人的なパワーで散らかった部屋をなんとか片付けた。
急激に動き回ったせいで熱がぶりかえして来たのか頭が更にガンガンしている。
その時チャイムが鳴った。
玄関を開けると真正面にヤナが立っていた。
そしてその斜め後ろに隠れるように、うつむき加減で立っている相原。
まるで似合いのカップルのようにさえ見えるツーショット。
―――イラつくわ……。
相原はいつものようにつかみどころのない無表情のまま沈黙している。
部屋に入ってからも話をするのはヤナだけで、相原はヤナに言われて仕方なしについてきたかのような冷めた態度でじっと座ったままだ。
ヤナは俺の所属する委員会や生徒会関係から預かってきたプリント類の説明をしてくれている。
俺はヤナの話に一応相槌はうつものの、相原のことが気になって仕方がない。
「……ってことだから、明日まだ学校来んの無理だったら朝イチ俺にメールしてくれ」
「………」
「……ヤマト?」
「……あ?……ああ、おん……メール、な……」
急にヤナに名前を呼ばれて俺は我にかえった。
全てを見透かすようなヤナの瞳と目が合って思わずギクリとしてしまう。
「―――じゃ、大事なことだけ『念のため』あとからメールしとくから。ゆっくり休めよ」
ヤナは鞄を持って立ち上がった。
『念のため』とヤナは言ったけれど、俺が話に集中していないことに気付いて気を効かしてくれたのだろう。
こういうヤナのさりげないフォローに俺はいつも助けられている。
ここまで繊細な気配りが出来る男だからこそ、相原の手助けにもなってくれると思って俺はヤナに文芸部の手伝いを頼んだのだ。
今となってはそれを少し……後悔している。
「……相原はどうする……?」
名前を呼ばれて相原がヤナを見上げる。
二人が言葉を交わさずに、意味ありげに視線を合わしてうなずきあうのを見て、俺はまたイラッときた。
「……相原……お前まだ帰んな!」
ついつい強い口調になってしまい、相原がギョッとしたように俺を見る。
自分でもひどく低次元な嫉妬だということはわかっている。
だけどこみ上げるイライラを自分の中で処理しきれない。
「――そっか。じゃな、ヤマト。あとでメールするから」
ヤナは何も気付かなかったような顔で穏やかにそう言い残すと部屋を出て行った。