嫉妬-1
またメールの着信音で目が覚めた。
熱に浮かされた頭には、この小さな電子音がひどく耳障りに響く。
さっき貼りつけた「ヒエピタ」はすっかり乾いてはがれかかっている。
枕元にある傷だらけのケータイを開くと、メールはヤナからだった。
『……今度はヤナか……』
かれこれ何十回目の溜め息だろうか。今日ばかりは無駄に友人の多い自分が、ほとほと嫌になった。
―――俺もほんまはこんな時ぐらい電源切って熟睡したいわ。
しんどいのにあえて電源を切らへんのは、アイツからのメールを待ってるからや……。
同じクラスやねんから、俺が風邪ひいて休んでることはわかってるはずやねんけど……。
相原のヤツ、朝からなーんにも言ってきよらへん。
普通彼女やったら
『大丈夫?』とか
『お見舞い行っていい?』とか
なんかあるんちゃうん?
――正直へこむわまじで。
つーか…俺ってこんなキャラやったっけ?
しんどい時に女に会いたくなるなんて今までの俺やったら考えられへん。
むしろメールや電話が来るのがうざったくて、ケータイなんかそばに置いとく気にもならへんかったのに……。
相手が相原やってだけで、なんでこんなしょうもないことにいちいちこだわってまうんやろ。
イライラしながらもヤナからのメールを開く。
『今から相原と一緒に
見舞いにいきます。』
見舞い………え?何?相原?
俺はガバッとベッドからとび起きた。
ヒエピタがついに力尽きて、おでこからはがれ落ちる。
………ヤナと相原が?
……なんでや……
なんであいつら一緒に帰ってくんねん。
しかもなんでそれを、相原じゃなくてヤナがメールしてくんねん?
――――なんか腹立つわ。
あいつら……
最近絶対おかしいねん………。
妙にうちとけてるっちゅうか
親密っちゅうか……。
そもそも……相原の所属してる文芸部の活動を手伝うようにヤナに頼んだのは俺やけど……。
ヤナが相原と同じマンションに一人暮らしをしていると知ってから、俺はなんとなく心中穏やかではないのだ。
ヤナと相原はよく似ている。それだけに二人は気が合うのではないかという気がしてならない。
ヤナに彼女がいるという話は聞いたことがないが、明らかに女物とわかる香水の匂いをプンプンさせたまま部活に来ることも多く、なんとなく俺の中では複数の女とうまく遊んでいるようなイメージがある。
二人の間に何かあったとは思いたくないが、最近休み時間などでも、席が前後の二人が話をしているのをよく見かけるようになった。
しかも、教室では常に無表情の『あの』相原が、ヤナ相手に笑顔を見せていることすらあるのだ。
―――絶対おかしいやろ。
気が合う二人が同じマンションで、しかもお互い一人きりの時間が長いとなれば……
二人の間に何かあったとしても不思議はない―――?