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異端児カラス
【学園物 官能小説】

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烏の雌雄-3

そうか……さっきのはヤナの声だったんだ。


助けてくれたのがヤマトじゃなかったという事実に私は少しホッとしていた。
あの男をヤマトに見られずにすんだ。


でもどうしてヤナがここにいるのだろう。


私はのろのろと身体を起こした。
発作のあとはいつも激しく体力を消耗するため機敏な動きができない。


立ち上がる気力がなくて、私はコンクリートの冷たい床にへたりこむように座るのが精一杯だった。


なんだか気まずくてすぐ後ろにに座っているヤナの顔を見ることができない。


何気なく下を見ると、くしゃくしゃになったコンビニのビニール袋が私の膝の上に落ちていた。


過呼吸の発作をおさめるためにヤナがとっさに持っていた袋を口に被せてくれたらしい。


よほど慌てたのか、玄関には袋に入っていたであろう缶コーヒーやパンや牛乳がめちゃくちゃに散らかっている。


いつも冷静なイメージのヤナが、発作を起こしている私を前に取り乱している姿を想像して、不思議な気持ちになった。


―――それにしても、ヤナは過呼吸の対処の仕方をどうして知っていたのだろう。

―――身近にいる誰かが同じ症状を持っているのか……それともヤナ自身が………





「――あの男、誰?」

急に聞かれてハッと我に返った。
まだ頭がぼんやりしていて、思考がとっちらかっている。
考えるべきことの優先順位が即座に判断できない。



「アイツ……前にも来てただろ」


――ドキッとした。


あの男が家に出入りするところを以前にもヤナに見られていたのだろうか?


私はなんとなくヤナが薄気味悪くなった。
ヤナには何故か私のことを全て見透かされているような気がしてしまう。



「……誰なんだよ?」

「……ヤナには……関係ないよ」


私の中に澱(オリ)のように沈澱した深い哀しみの沼。

表面はどんなに澄んでいても、少しでも身動きすればそれはたちまち濁ってしまう。


恋に浮足立つ私をあざ笑うように、ヘドロは足元にどろどろと絡み付き、私を深みへと引きずり込んでいく。


本当は誰かに助けてほしくて、私の心は悲鳴をあげている。




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