塒(ねぐら)-4
俺はベッドに仰向けになると、両手を頭の後ろで組んだ。
「相原が脱がしてぇや」
「……あたしが……?」
相原は少し俺を睨みつけるような顔をしたが、観念したのか俺の身体の上に重なってきた。
相原の指が、ボクサーパンツの上から俺自身をそっと撫でる。
「……んんっ……」
もうじゅうぶんすぎるくらい硬くなったその部分は、 相原の指先に異様に敏感に反応してしまう。
「……ヤマト……」
相原は俺のパンツに手をかけてゆっくりと脱がし始めた。
相原が急に大人びて見え、なんだか自分が童貞に戻ってしまったような気分になっていく。
俺は不思議な倒錯した感覚に襲われ、こんな単純なシチュエーションに激しく興奮している自分に戸惑っていた。
パンツが足から抜き取られ、俺のいきり立った欲望があらわになる。
相原は先端をぬらぬら光らせている俺自身を嫌がらずに優しく握ってくれた。
相原の体温に直接敏感な部分を包みこまれ、軽い電流のような快感が身体を駆け登っていく。
もっともっと相原を強く感じたい。
「なぁ……相原……口でしてくれへん……?」
俺は相原の前ではただの『甘えた』になってしまう。
どんなにカッコ悪いところでも相原には全部さらけ出してしまいたくなる。
なんでやろな………。
『別に断られてもええわ』と思って言った俺のワガママを、相原は拒まなかった。
「……いいよ」
小さな声でそう言うと、相原は急に妖艶な顔つきに変わった。
教室では無表情の仮面を決してはずさない相原。その下に一体お前にはいくつの顔を持っているのだろう。
その全てを俺に見せてくれ。
その全てを―――
俺はきっと好きになる。
相原は仰向けに横たわる俺の足の間にひざまづき、ぬるついた鈴口にゆっくりと舌を這わせ始めた。
「……あっ……ううっ……」
生暖かい舌の感触に反応し、俺の欲望はピンと跳ね上がる。
あの相原が俺のぺニスを舐めている………。
そう思っただけで俺は爆発してしまいそうだ。
相原は陰嚢をやわやわと揉みながら、陰茎の裏側に集中的に舌先を這わせてくる。
想像以上に慣れた手つきと舌使いに俺は戸惑ってしまう。
なんでそんなに慣れてんねん……。
誰が相原にこんなことを教えこんだんや……。
相原の記憶の中にいる見知らぬ男の影に、俺は嫉妬していた。
俺が思っている以上に、相原とその男の関係は濃密なものだったのではないか――。
そんな気がした。
そいつと何回寝たんや……。
俺はあと何回お前を抱けば、そいつを消してしまえる?
こんなしょうもないことにこだわってる……俺は最低最悪の男なんかもしれん。
自分がこんなに小さい男やったなんて、俺自身が一番知らんかったけど――この苛立ちを止められへん。
相原が上手ければ上手いほど、気持ちよければ気持ちいいほど、俺は無性にむしゃくしゃした。
相原を幸せにすんのは俺や。
俺以外の男なんかみんな忘れてしまうくらいにお前の中に俺を刻みつけたい。
「相原……俺にもやらして」
「えっ……何……?」
俺の言葉の意味がわからずに戸惑う相原。その尻を俺は強引に抱き寄せ、俺の顔の上を跨がせる。
俺達はシックスナインの体勢になった。