記憶-6
ミチミチと肉が裂けていくような嫌な感覚が俺の肉棒に伝わってくる。
「……ひいっ……い……うう……っ」
真純は予想以上の痛みに悲鳴をあげながら俺の身体にしがみついてきた。
真純の内壁が俺を押し戻そうと激しく抵抗 してくる。
一旦腰を引いてからまた前にゆっくり押し出して、少しづつ奥へと侵入を試みる。
痛みが少しでも軽くなるように慎重にピストンを繰り返すが、その度毎に真純の身体はギチギチと音をたて、痛みから逃れるように上のほうへとずりあがっていく。
それでも真純は決して『痛い』という言葉を口にしようとはしなかった。
その健気さが俺の胸を締め付ける。
真純……ごめんな―――。
お前がこんな思いまでして俺に差し出してくれた真っさらな心を、俺は行為が終わったら きっとくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ棄てる。
俺はそういう最低な男だ。
何十回もゆるゆるとした抽送を繰り返して、俺の肉棒はようやく根元まで真純の中に入った。
真純は涙をぽろぽろと流して俺をきつく抱きしめている。
愛しているとか好きだとかいう感情ではなく、俺はただ目の前にいる献身的な少女がかわいそうになり、深く繋がったままの状態で真純の額に軽く唇をつけた。
「……幸せ……」
真純は独り言のようにため息まじりの吐息をもらした。
真純の身体は奥へいくほど更に硬く、俺自身が快感を感じたりセックスを楽しめるような状態には程遠かった。
それでも真純の身体でイってやることが、今俺のできる唯一のつぐないであるような気がした。
「……少し痛いけど……我慢しろ……」
俺は小さな子供に言い聞かせるように真純の頭を撫でると、さっきより速く腰を動かし始めた。
「……ふうっ……ああっ……」
真純は眉をひそめてじっと痛みに耐えている。
真純の胎内の全ての細胞が俺の精液を一滴残らず搾りとろうとするように俺自身をぐいぐいと締め上げてくる。
少しでも早く真純を痛みから解放してやりたい。
俺は早く達するために自分のウィークポイントをあえて狭く硬い真純の中に強くこすりつけた。
最低だと思いながらも相原の身体の手触りを無理矢理思い出した。
文芸部の部室での白昼夢のような淫靡な瞬間が蘇る。
「……ああっ……ふあっ……あっ……」
真純は俺の下で顔を歪めて喘ぎとも悲鳴ともいえない声を漏らしている。
快感など何もないだろうが、俺のことを好きだという一途な気持ちだけが真純を支えているのだろう。
その真純の腹の上で俺は違う女のことを考えている。
妄想の中で俺は相原を裸にむいて、激しく腰を打ち付けていた。
現金なもので、妄想をふくらませた途端に一気に快感が高まる。
「……あっ……ああっ……先輩っ……」
「……真純……出すぞっ」
俺は短く言い放ち、真純の腹の上に白い精液を吐き出した。
俺の陰茎は破瓜の証である鮮血でぬらぬらと赤く染まっていた。
血を見た瞬間、俺は取り返しのつかない罪を犯した犯罪者のような気分に陥った。
真純は横たわったまま俺に背を向け、こらえていた物が急に溢れ出してしまったかのように、激しい鳴咽を漏らして泣き始めた。
『自慰以下の最低なセックスだ――』
俺は泣いている真純の肩を抱くことすらできない。
抱けばもっと最低な男になってしまうような気がした。
すっかり暗くなった体育用具室で、俺と真純はそれぞれ別々の方向をみつめたまま、ずっと黙りこくっていた。
END