投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

愛を知らない役者
【ファンタジー 恋愛小説】

愛を知らない役者の最初へ 愛を知らない役者 17 愛を知らない役者 19 愛を知らない役者の最後へ

愛を知らない役者 (後編)-2

彼の本性に、一瞬呆気にとられたが、こちらも別に睦事をしに来たわけではない。
本当は、疑似愛を買った上に、更にニセモノの淫らな雰囲気や甘い囁きを作るのは、いつも面倒だったんだ。
そもそも、元から愛は無いのだから、ガルハーンのようなサバサバした性格は好都合だった。
とりあえず寄り添って、首筋に牙を埋めさえすれば良いのだ。

ベッドに腰掛け、部屋を見渡す。
タペストリーにカーペット、部屋の中央には毛足の長い絨毯。
ブルーと金色で彩られた室内は、ガルハーンの中東系の若々しさによく似合っていた。
しかし、男妾とは言え男だからか、こまごました装飾品や家具は少なかった。
開いたままの衣装箪笥にも、数枚しか服はかかっていない。
今までの蝶々達とは、だいぶ部屋の雰囲気が違うのが面白かった。

ついでに、先程彼が消えていった脱衣所も覗いてみる。
――そこで、妙なものを見つけた。
彼の部屋には不釣り合いなもの。
蝶々達の部屋にあるのなら、なんらおかしくはない。
それは、薄い水色のビロード張りで、金の蝶番の付いた小箱。
蓋をあけて、匂いを嗅いでみるが、思ったとおりの代物だった。
…なぜ彼はこれを?
しかも、脱衣所にあるということは…。
そこまで考えたところで、風呂場の水音がやみ、乾いた布の衣擦れが聞こえて来たので、部屋に戻ることにした。

さっぱりした顔で出てきたガルハーンに、湯を勧められる。
「お待たせ、ダニエル。
早く海の臭いを落としてきてよ。
磯臭いオトコになんて、抱かれたくないからね」

にやっと笑うガルハーンに言われ、長い船旅で臭いが染み付いてしまったかと、慌てて俺も風呂をいただくことにした。
例の"妙なもの"を確認するのは、その後だ。



愛を知らない役者の最初へ 愛を知らない役者 17 愛を知らない役者 19 愛を知らない役者の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前