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愛を知らない役者
【ファンタジー 恋愛小説】

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愛を知らない役者 (後編)-1

とある会場。

『 映画"エターナル・ラヴァーズ  〜永久の伴侶の物語〜"
 完成祝賀会 』
…と、横断幕が掲げられている。


とある役者達の会話。
「やぁ、ソフィー、撮影、おつかれさま。
ねぇ、このパーティの後、2人で抜け出さない?」

「またあなたなの、…ダン。
主役級が消えたら目立つから、嫌よ。」

「つれないなぁ、ソフィー。
でも、断り方も男らしくていいや。
ホンモノもオトコマエなんだね」

「…なによ、本物も男前、って。
ダン、せめて、ちゃんとミズ・ソフィア、って呼んでくれない?
ソフィーって縮められるの、好きじゃないの」


彼女の名は、ソフィア・シトローニ。
黒髪をボブカットにした、すらりと背の高い、イタリア系の美女だ。
今は、クリスタル飛び散る濃紺のドレスを着て、パールで飾られたシルバーの櫛で髪を掻き上げ、涼やかな額を惜し気も無く出している。

そして、ダンと呼ばれた彼は、ダン・イルキッシュ。
ソフィアのそれよりも5cmほど下に目線があり、まだ表情は少年のようだ。
ちなみに、本名はダン・ブルックス。
芸名のイルキッシュは母方の名字であり、中東系の血の混じる彫りの深い顔立ちのハーフだ。


「ではミズ・ソフィア、誰もあなたをソフィーと呼ぶ人はいないの?」

「そうよ、皆に訂正しているもの。
そ・れ・と。
10歳も年下は、相手にしないって何度も言っているでしょう?
そんな年下のコに抜け出そう、なんて誘われても、嬉しくないわ」

「やだな、ソフィー、オレは8歳下だってば。
10歳は、役の上の話でしょ?」

「もう、またソフィーって呼んでる。
直すまで口きかないわよ」

「そう言うなよ、妖しいベッドシーンを演じた仲じゃない、"ダニエル"?」


----------


ヴァンパイアの俺、ダニエルは、数百年にも及ぶ長い旅路で、北から南へと下っていた。
今は、雲に従い大陸を歩き、遠くの"向こう岸"へ海を渡っている。
どこかで俺を待つ、"永久(トワ)の伴侶"を求めて。


新しい大地に見付けた、ひんやりとした石の館。
そこには、こりっとした少年ばかり、ということに、気付いた時にはもう、俺には浅黒い肌をした"ガルハーン"が宛がわれていた。
南に向かうにつれて奔放になる女性達に、若干胸焼けがしていたから、少し"味"を変えるには良かったかもしれない。


「ぼくを選んでくれてありがとう、ダニエル。
ガルハーンといいます。
ね、はやくぼくの部屋へ行こうよ」
10cm近く下からの上目使いで、ガルハーンが誘ってくる。

遣り手婆ならぬ遣り手オヤジに会釈をし、俺は少年に手を引かれて階を上がった。
導かれたのは、絹の天蓋付きベッドのある、エキゾチックな部屋だった。
かすかに香の匂いがする。

と、少年の態度が豹変した。
「…ふぅ、つっかれた!
オヤジの前だとブリッコしなきゃなんなくてさー。
あ、適当に座ってて、オレ、先に湯浴みしてくるからさっ」


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