愛を知らない役者 (後編)-12
…きっと、アンジェリカを見付け出す。
これが、信じる気持ちなんだ。
…あの娘に、はやくまた会いたい…!
これが、人を愛するという心なんだ…
そして俺は、ある噂を聞きつける。
とある大きな港街の、とある評判の良い宿にいるという、とある変わった蝶々の噂を。
その蝶々の源氏名は、黒ルビー。
どうやら、通り名に"永久の伴侶"と付くらしい…。
行ってみる。
遣り手婆に話を付ける。
部屋に案内される。
ドアを開ける…
――逆光。
金茶色の髪が揺れる。
彼女が、喜びの声をあげる。
ヴァンパイアは、永久の伴侶と再会し、魂の安らぎを得る。
そう、愛するひとを、やっと、見付けたんだ―…
〜幕〜
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ここで、ヴァンパイアの物語はおしまい。
今回の役が、異性であったにも関わらず入り込めたのは、やはり役柄が自分と似ていたから。
そして、自分自身も、"永久の伴侶"を見付けることが、できたから。
愛を知ることが、できたから―…
〜Fin〜