愛を知らない役者 (中編)-6
ゴラン卿が村を去ったその晩、悲劇が起きた。
4人の死者と1人の重体患者。
重体で済んだのは、村長宅の女中頭。
えづきながらも、彼女はディナーのメインをつまみ食いしたことを懺悔した。
村長は、その時は、すでに意識不明に陥っていた。
村人が何人かで、村の外れの家に走ったが、そちらも既に手遅れのようだった。
一人分の食事を食卓にセットしたまま、妻は台所で倒れていた。
まだ5歳の息子は、汚物にまみれて、自分のベッドでこと切れていた。
そして、家長は厠にいた。
なんとか謝罪の言葉を口にすると、そこで意識を失った。
その家こそ、アンジェリカの生家だった。
朝までに、両親と村長は、彼女の弟の後を追うかのように亡くなった。
しかし、アンジェリカが帰らない。
結局、彼女は、ゴラン卿の行方を探しに出た捜索の者によって、小川のほとりで発見された。
見付かった時は、顔面蒼白で倒れていたので、こちらも犠牲になったのかと思われたが、眠っているだけと分かり、その場で起こされ、悲劇を耳にした。
恐ろしい朝だった。
ゴラン卿の行方は、結局分からなかった。
助かったか、弱ったところを狼にでも襲われたのだろう、ということになった。
そしてアンジェリカは、何日も置かず、村を出た。