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愛を知らない役者
【ファンタジー 恋愛小説】

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愛を知らない役者 (中編)-10

私は、ヴァンパイアになってしまった。
でも、常に血に飢えているわけではない。
血を飲むだなんて…考えるだけで、気持ちが悪い。
この分なら、首のアザさえ隠せば、売春宿で働くことはできるだろう。

私は開き直って、生きる為のすべを探し始めた。
もうマトモな職や、どこかの店の下働きから始めたい、等という希望は消し去った。
家族を失くした暗い闇は、同じ暗い色の服を来て弔うことにした。
――もう、黒しか着ない。
そう決めた頃、ある宿を見付けた。

そこは、かなり大きい港街で、売春宿も、いくつもあった。
その中でも、割りと高級だが、あらゆるタイプの女達を置いている、という噂の宿があったので行ってみる。
まだ若い艷やかな女将と、その女将さえも頭の上がらないという遣り手婆の前で、黒い服を着る理由を話した。

しかし…言われたのは…
「うーん…アンタ、いまいち地味なんだよね。
しかも、この世界ははじめてなんだろう?
それじゃ、ウチで売る程の理由が無いんだよねぇ」

長キセルをふかしながら、女将が通達してきた。

「そんな…地味と言われても、私はこの色しか着られません…!」

その時、遣り手婆が口を開いた。
「…嬢。
あんた、ほんとに何も持っていないのかね?」


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