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イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

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イジメテアゲル!-9

「ん、はむ……ちゅ」
 舌先が触れると、身体に電極を差し込まれたような刺激が走る。英助の震えを察知した美奈は鼻で笑う。薄目を開けると、いつもの醒めた視線に、どこか愛しさのようなものが感じられる。肩にかかる髪をかきあげもせず、彼の首筋を擽る。逆に彼の切りそろえられた揉み上げを逆撫でると、火照って赤くなっているであろう耳を冷たい指で冷やす。
「ん……んう……分かったかしら? 私の弱み……」
 ゆっくりと唇を離すと、桃のジュースより甘く、どろりとした唾液が床に落ちる。
「な、なにが?」
「はぁ……わかんないかな。いい? 私は英助が好きなの。だから、英助がいじめられているのが耐えられないのよ!」
「ならなんで、焼きそばパン」
「それは、だって、英助をオモチャにしていいのは私だけなんだもん……」
 幼い様子を醸し拗ねたように呟くが、その仕草に今までに何度も騙されてきたことか。
 しかし、キスの余韻のせいか、今回ももれなく騙されてしまう。そもそも、とんでもないことを言い出しているのだが……。
「そうなんだ。分かったよ。ごめん、疑って……」
 英助は桃のジュースの差し入れた理由を考えていた。意外と少女趣味である美奈が、ファーストキスを甘くしたいと思ったんだろう。事実、彼女の唇は甘く、きっと自分のそれもそうだったはずだ……。
 俯き、唇を押さえたまま震える彼女を見ると、少しでも彼女の恋心を疑った自分が恥ずかしくなる。その白い頬から宝石のような雫が零れると、彼は考えるより早く、彼女を抱きしめていた。
「ゴメン、ほんとゴメン。だから、もう泣かないで」
「言ったでしょ? 英助は私の弱みなんだって……、女の子から告白させるなんて、ずるい人……」
「あぁ、分かったよ……」
 彼女の肩を抱き、低く、力強く宣言する英助。しかし、彼の眼の届かぬところでは、赤く泣き腫らした目を愉快そうに歪ませる美奈がいた。

〜〜

 その日は朝から雨が降っていた。
 本格的な梅雨が始まると、肌に纏わりつくような湿気で不快指数が順調に上がる。
 この時期になると空調のある図書室の需要が一時的に増える。英助もその一人だった。
 今日の指令は化学の実験結果をレポートとしてまとめること。実験自体は別に行ったため、結果の捏造になる。
 まるでクライムサスペンスのワンシーンだが、要は小数点以下の数字をいじくる程度。英助は実験結果を記録したノートと参考資料を広げ、捏造に取り掛かる。
「……あ、いたいた。こんなとこに居た」
 入り口の方から多香子のハスキーな声が聞こえた。見ると千恵に由美、それに美奈も一緒にいた。
「進藤君、もうレポートは終わりましたか?」
 今日の由美は髪を二つに分けてピンクのリボンで止めたツインテール。とてとてと走ると、ふわふわと先っぽが揺れている。
「まだ終わってないけど、こんな感じでまとめるつもりだよ」
 レポートの催促だろうと思った英助は、既に出来上がっている分を見せる。
「さすが進藤君です。私達もこれをお手本にまとめさせてもらいます」
「別にいいよ、適当に数字変えておくだけだし」
「だめです。嘘を書くのは良くないです」
 ――頼んできたのはそっちだろ?
 英助は言いかけた言葉を飲み込む。
 考えてみればレポートを押し付けてきたのは由美ではなく、千恵と多香子。もともと彼女達の課題なのだし、筆跡やレポートの作りが同じだと指摘されても面倒だ。
「そ、じゃあ俺は帰るけど……」
 お暇を出された英助は荷物をまとめる。最近は彼女達のせいで部活にも顔を出せずにいたので、久しぶりに部室に寄ることにする。


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