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イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

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イジメテアゲル!-8

「……なんか足りない気がするけど?」
「いや、ほんと、これだけだってば」
「ふーん、まぁいいわ。やっぱり英助がそんなことするわけ無いと思ってたし」
「ほ、ほんと? 信じてくれるの?」
 これまでのことなど一瞬にして水に流せる。彼女だけは、幼馴染である彼女だけは、自分を信じてくれたことに、英助は目を潤ませてしまう。
「だって、私のようなスーパー美人を幼馴染に持っているのよ? どうして他の子にちょっかい出す気になれるのよ」
 自信満々に言い切る美奈に、英助は言葉を忘れる。それでも幼馴染の彼女が自分の潔白を信じてくれるのは嬉しいことであり、胸中に熱いものが溢れる。
「で、さ……やっぱりイジメはよくないと思うのよ」
「イジメ? 誰が?」
 目を丸くして聞き返す英助に、美奈は呆れたように頬杖をつく。幼馴染の天然ぶりに、イラついたのか、サラサラの髪を指でくるくると巻きながら、醒めた視線を彼に向ける。
「アンタよ。あ・ん・た! 今英助が私達にされていること以外に何があるって言うのよ。もう、ほんと、どこまでお人よしなのよ」
 自覚があるのならやめれば良いのにと思う英助だが、彼女に理屈は通用しない。
「それにさ、もしこんなことが表沙汰にでもなったら、皆困るでしょ? 最近じゃ内申書が重要になってきてるし、私としても変なことで足を引っ張られたくないのよ」
 ――それが本音ですか……。
 ちょっぴり見直した自分がすごくバカみたい。喉まででかかった言葉を差し入れのジュースで飲み下す。
 桃の甘ったるい香りと、どろりとした喉越しは、今の自分の状況に似てなんとも複雑だ。
「でね、やめさせるにしてもね、由美が今更痴漢が嘘でしたって言っても遅いと思うの。だって、変なシャメ撮られてるしさ」
 自分とそのムスコのツーショットは、確かに不都合な材料だ。そもそもアレだけで英助の学校生活の半分を破壊する力がある。
「でも、どうしろっていうのさ?」
「だからあ、逆に三人の弱みを握ってやればいいのよ」
 弱みを握る……。確かに今の彼の状況は弱みを握られているわけで、対等になるためには、同等の情報が必要というのは頷ける。しかし……、
「そういうのはよくないよ」
 美奈に比べ常識的な英助に、そのような悪だくみが出来るはずも無い。
「なによ。アンタ、このままバカにされてていいってわけ?」
「そうじゃなくて、卑怯なことがしたくないんだ。それに、ミーさんだってイジメに加担しているわけだろ? それなら三人だけじゃなくて、ミーさんの弱みも教えられるのか?」
 むしろそれには興味がある。というより、それさえあれば他の三人の弱みなど知る必要が無い。
「う、それは……その」
 思わぬ反撃に途端に口ごもる美奈。
 もし、ここで彼女の弱みを握ることが出来たのであれば、おかしな企みも潰えるわけで、例え教えてもらえなかったとしても甘言を断ることが出来る。
「ピ、ピーマンが苦手……とか?」
「それくらい知ってるよ。他にも猫が苦手で、犬が好き。人を待たせるのに、待たされるのは嫌い。そばはダメなのに焼きそばは好き。他にも……」
「ほら、そば粉アレルギーとか」
「そうじゃないでしょ? それともミーさんは皆の好き嫌いを調べてもらいたいの?」
 意地の悪い言い方だと思うが、それよりも何故彼女が急にこんなことを言い出したのかが気になる。彼女は自分の得にならないことをしない性格なのだし……。
「ね、本当に知りたい? 私の弱み……んー、私だって普通の女の子だよ? 弱いところ、あるんだけどな……」
「そ、そうなんだ……」
「教えてあげる。私の弱み……。それはね」
 美奈は英助の持つ飲みかけのジュースを奪うと一口含む。その白い喉がコクリと動くと、柔らかい、しっとりとした感触が彼の唇に訪れる。
 ――甘い……、そういえばミーさん、桃も好きなんだよな……。
 英助も目を瞑り、神経を唇に集中する。顔の角度がずれると、異物が彼の唇を押しのけ、無遠慮に侵入を開始する。


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