投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

イジメテアゲル!の最初へ イジメテアゲル! 6 イジメテアゲル! 8 イジメテアゲル!の最後へ

イジメテアゲル!-7

「そうだ、進藤君、英文の翻訳終わった? まだなら……」
 そもそも英文翻訳でも資料集めでも、成績優秀で通っている由美には不要。
「まだなら、しっかり昼休みに終わらせておきなさいよ!」
 千恵のイジワルそうな声が、由美のかぼそい声を掻き消す。
「はいはい、分かってますよ」
 英助は焼きそばパンを頬張ると、自分の席へと戻り、時間を惜しんで英和辞書と格闘を始める。

〜〜

 教室の掃除に手芸部の雑用、陸上部の用具整理にまで借り出され、一息つく頃には既に下校時刻。しかし、彼にはまだ古文の現代語訳が残っている。
 悩んでいても仕方がないと、英助は古典の教科書を開き、分かりにくい部分をまとめ始める。まだ教師も残っているだろうし、今から始めれば明日の昼までには終わるはず。
「……んもう、本当に英助はお人よしね」
 教科書に向かう英助のオデコに冷たい缶が押し付けられる。知恵熱の出掛かっていた彼には丁度よいが、突然のことに戸惑う。
「ミーさんか、何の用? 見ての通り忙しいんだけど……」
「はい、部室の掃除手伝ってくれたお礼ね」
 そう言うと、美奈はジュースを彼の前に置く。どうやら差し入れのつもりらしい。
 いつもなら「私に向かってその言い草は〜」などと言い返すはずなのに、今日に限ってこの幼馴染は素直に労ってくれる。むしろ哀れみなのかもしれない。
「あ、ありがと」
「ふぅ、それにしても、英助が由美にエッチなことしたなんてねぇ……」
「それは誤解だよ。俺はそんなこと……」
「でも、多香子に締め上げられたときなんて、あんなに嬉しそうにしてたし、英助、アンタ溜まってるんじゃないの?」
 普段の美奈のキャラしか知らない者からすると、彼女の率直な物言いに驚いたかもしれない。しかし、中学以前からの知り合いである英助にしてみれば、それが普通である。
「それは、しょうがないじゃないか。茜沢、あれで結構女らしいとこあるし」
「へー、やっぱり嬉しかったんだ? わー、やらしんだ」
「んもう、ミーさん、用は何なの? それを言いに来ただけじゃないでしょ?」
「うふふ、ま・ね」
 そう、美奈が彼に本音モードで話しかけてくるときは、決まって余計なことを考えたときなのだ。そして、これまで何度も酷い目に遭ってきたのだった。
「うん。でも今回は違うわよ。なんていうかさ、ちょっと変なのよね。由美の態度。なんで英助にエッチなことされたのに、進藤君なんて言ってるのかしら」
「うん、それは俺も思う。つか、エッチなことなんか……してない……」
 ふと電車での記憶を思い出す。あの日、痴漢から彼女を庇ったあと、彼は電車の揺れにかこつけて彼女を抱きしめる格好になった。
 もしかしたらそのことを言っているのかもしれない。しかし、そうだとしても、彼女が自分を庇う物言いをする理由が分からない。
「今、考えたでしょ? なに? 教えなさい。でないと……」
「分かったよ。話すよ。実は……」

 朝の電車がたまたま混雑していたこと。同じ車両に由美が乗っていたこと。彼女が痴漢に遭っているのを見つけ、それを庇うような位置に移動したこと。

 そこまで話終えると、英助は視線を空に泳がせた。


イジメテアゲル!の最初へ イジメテアゲル! 6 イジメテアゲル! 8 イジメテアゲル!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前