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イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

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イジメテアゲル!-6

「あ、あのね、この前電車で、私、痴漢に遭ったの……それでね、同じ電車にいたのが進藤君でね……」
「ほら見なさい、進藤英助! アンタが卑劣な行為に及んだ証拠はあがっているのよ」
 由美が言い終わらないうちに、千恵が遮るように大声を上げる。
「な、なんでだよ。白河、本当のことを言ってくれよ! 誤解だって」
 千恵を押しのけ由美に詰め寄る英助だが、襟首をぐいと引っぱられ、蛙を押し潰したような鈍い声を上げて咳き込む。その隙に多香子は、彼の首に腕を回し、見よう見まねのプロレス技をかけ始める。
 絞め方の甘いせいかそこまで苦しくないのだが、スタイル抜群の彼女と身体が密着する状況だと、悲しいかな男の性で、柔らかい二つのそれを意識してしまう。
「お、おい、茜沢……放してくれ」
 英助は必死で叫ぶ。自身の生理現象が発露する前に、何とかして魅力的な弾力から距離を置かねばならない。しかし、こらえ性の無い息子は既に自己主張開始の秒読みに入っており、緩めのズボンは放任主義らしく、ムスコを縛ろうとしない。
「あ、やだぁ……進藤君たら最低!」
 絹を裂いたような悲鳴を上げて由美は顔を覆う。続いて気付いたのは千恵。彼女は「ほうほう」と興味津々の様子で、保健の課外授業に勤しむ。
「あはは、コイツ勃起してるのかよ? もしかしてマゾ? 格好悪! つか最低だな、痴漢して、あたしに羽交い絞めされて勃起するなんてさ!」
 多香子の勝ち誇った声が、恥ずかしさと悔しさで真っ赤になる彼の耳に響く。
 その様子に、美奈はもう一度深くため息をつき、さも落胆したかのように肩を竦めるのであった。

〜〜

 四時間目のチャイムがなると同時に、英助は弾かれたように教室を出る。
 向かう先は昼食を買う生徒でごった返す購買部。目当ての菓子パンは人気が高く、昼休み開始五分でなくなってしまうことすらあるからだ。
 普段からのんびりを心がける英助は、競争率の高い菓子パンに手を出すことなどないのだが、そうも言っていられない理由がある。
 ――白河はメロンパンで、久住はハニーサンド、茜沢とミーさんは焼きそばパン、あ、俺の分もそうしよっと。
 彼は由美とその周りの面々のパシリに成り下がっていた。
 例の放課後体育館裏呼び出しのあと、彼女らは英助にある条件を出した。
 彼の痴漢行為を教員へ黙っている代わりに、下僕になれと。
 事実と違うと食い下がる彼だが、多香子のボディランゲージで興奮してしまったところを携帯で撮影されてしまい、その画像をクラスの皆、さらには学校中にばら撒くと脅される。
 さすがに弁解の余地が無く、結果、彼は頷いてしまった。
 目的の品を買い終えたら、そこまで急ぐ必要も無い。しかし、午後の授業までに、英文翻訳を終わらせておく必要がある。他にも政経のレポートの資料集めに、掃除当番の代行など、彼のスケジュールは目白押しなのだ。

〜〜

 教室に戻ると、彼女らはすでに机をつき合わせて、準備をしていた。
 英助は両手に抱えていたパンを机に降ろすと、まるでひな鳥にエサを与える親鳥のようにパンを分け与える。
「はい白河にはメロンパン、茜沢は焼きそばパンで……ミーさん、それは久住の分。勝手に漁らないの」
 美奈の手をぺしりと叩き、代わりに焼きそばパンを与える。
「あら、だってハニーサンドの方が美味しそうなんだもの。ねぇ、英助もう一度行って買ってきてくれないかしら?」
「美奈、酷いな。でもま、確かに美味しそうだし、うちの分も買ってきてよ」
 釣られたのか多香子まで余計なことを言い出す。
「おいおい、そりゃ無いよ。つか、茜沢、五〇円足りなかったぞ」
 五十円程度忘れてもよいのだが、エスカレートされても困るのでしっかり請求する。
「いいじゃん、五〇円くらいおごってよ。せこい男はもてないぞ?」
「ダメだよ、多香子ちゃん。ちゃんとお金は払わないと」
「ちぇ、由美姫様がそういうならわっかりましたよー」
 そう言うと多香子は財布を取り出す。当然といえば当然なのだが、何故由美がわざわざ彼女を嗜めるようなことを言うのだろうか?
 一番の被害者といえば、痴漢に遭ったと訴える由美であるはずなのに、現実として英助をこき使うのは他の三人の方が多い。


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