DOLLHOUSE〜余韻(琴音V)〜-2
ふと、思いつく。
「なあ、コト」
「なあに?」
「オマエ、バックってやったことある?」
「やったことあるでしょー?私向かないのよねえ。ヤリづらいって梶くんも言ったわよ?」
確かにコイツのは上つきで、ケツからはやりづらい。
「そうじゃなくて。アナル」
「あるわよ…でも…私でヤるというのは許さないわよ。絶対に。」
琴音の気配が変わった。
琴音の顔は後ろの俺には見えない。おそらくは顔も剣呑な目でどこかをにらみ据えているに違いない。
「殺してやるわ。それが無理なら死んでやるんだから…」
大抵のことはケラケラ笑うような女だ。
「兄貴か」
「そーよ…だからこの話はおしまい!」
ぱん。…ちゃぷ。
琴音が両手を鳴らして手を沈める。泡が飛び、音が反響する。
琴音の初めては兄貴のレイプだそうだ。
兄貴の話はタブー。
特に隠してはいない。こういう時には断片的に話すし、聞けば答えてくれるだろうとも思う。
ただ、コイツの表情を封じてまで聞きたいことじゃない。
琴音を力ずくで押さえ込むのは簡単だ。
けれども、その後に関係を修復することは不可能。少なくとも俺には。
琴音はこの猥雑な世界で呼吸し、力強く生きている。手折れば色を失いつまらない女になってしまうだろう。
リカのように閉じこめることに意味を見いだせない。
「…後ろ、興味あるの?」
「いや、聞いてみただけ。さすがに抵抗がある」
「ふふ。アソコは出すとこで入れるとこじゃありませんー。梶くんに入れられたら壊れちゃうよ」
琴音が笑った。
「後ろの処女がほしいなら、オトコノコ探しなさいな。オンナノコより確率高いわよ、たぶん」
「…いらない。そんなの」
心底ゲンナリする。俺はノーマルだっつーの。
ざばあ…
俺は浴槽を出てシャワーを浴びた。泡が流れていく。
「もう出ちゃうの?」
「ん。寝るわ。コトはどうする?」
「んー。もうちょっと遊んでから寝る」
「あ。そ」
バスルームを出ると。
ばっしゃん!ばっしゃん!
という、水音が響いた。
「むうー!」
何か言ってる。一体なにやってんだか。オマエはイルカか?
眠気が襲ってくる。俺はベッドに直行した。
「おーじゃまー……」
小声でいいながら、忍び込んできたので目が覚めた。
細いウエストに腕を回して腰を引き寄せてやると嬉しそうにすり寄ってきた。
「ん。おやすみ」
俺たちは心地よい眠りに落ちていった。