DOLLHOUSE〜快楽と残滓〜-1
「ああっ…ん。 ううぅっ」
ジジイの部屋からはいつもタルイ女の声がしていた。
また、別の女を買い込んできたのか。
ソレは日常茶飯事で、ソレがために俺は女嫌いだった。
与し易しと思うのか、子供の俺に粉かけてくる女もいた。
汚ねえ。
オヤジも兄貴も女はしょっちゅう変わっている。
オフクロは趣味の絵画でアトリエに籠もりっきりで、オヤジには関心がない。
女作って遊んでれば、気兼ねなく自分の好きなことができるしな。
俺は、家政婦のきよさんの料理を食って風呂入って寝るだけ。ふん。
ウチは本当に腐ってやがる。
ある日廊下を歩いていたらジジイに呼び止められた。
「なんだよ」
部屋に入ると、全裸の女が腕を吊されへたり込んでいた。
吊られてるといっても正座して手首が胸元にくるぐらい。
それでも、両手首をまとめて括られているから、自由に動けはしない。
押し倒されちまえば、腕は上に伸びきって動かすことはできないだろう。
目は虚ろでもう半分イッちまったような女だった。
胸が異様にでかい。
俺は哀れに思うと同時に感じてもいた。
くそ。忌々しい血め。
「ヤッてみたくはないか?」
高校受験を控えたニンゲンにいうセリフじゃないね。
ジジイはニタニタと笑って俺の股間を見ていた。バレバレか。
「ジジイの手付きなんかイヤだね」
「わしも最近は弱くなってな。その気はあるがままならん」
十分だろ。この女の様子じゃ。
「コレがヤラレるとこを傍観してみたいと思っての」
女がびくっと身震いをしたのが分かった。
「お願いです。もう許してください。帰してくださいっ」
「ダメだ。お前はもう死んだんだ。だが、本当に死んだらまだ幼い娘はどうなっても知らんぞ」
け。最低だ。
「冗談じゃネエ。やだよ」
「お前童貞なんだろう?」
ジジイが嗤う。バカにされているのは分かったが、こんなのは茶番だ。
ジジイの見世物になるつもりはねえ。
「…童貞じゃねえ」
「やり方を知らんのなら教えてやるぞ。それとも、貴之か孝に女を恵んでやれと言っておこうか」
ジジイは俺が童貞と決めたらしい。ソレが真実かどうかは関係ない。決めたんだから。
言うといったら言う。オヤジや兄貴に言いふらすだろう。
事実本当に童貞であったから、忌々しい。ヘンな意地もあった。