DOLLHOUSE〜羽化〜-5
「気がゆるんでイッちまったじゃないか。…確かに快楽に溺れるように身体を弄ったつもりだったが、ソレは好きとは別だろう?」
ご主人様がくるまっていた毛布をはぎとった。
私は身体をおりたたんでまるくなったままでいた。
「私は金で買われたニンゲンだけど、金の匂いに寄ってきたわけじゃないです。エッチが好きなわけでもなくて」
私は毛布の端をたぐり寄せてまたかぶった。
「いえ、今日はちょっと気持ちよかったけど…そうじゃなくて。私を綺麗だっていってくれた表情は本物だって思ったから。
…いえ『綺麗』ていうのは嘘かもしれませんけど」
自分でも何をいっているのか分からない。
これは好意だ。ずっとひどい目にあってきたのに。
ご主人さまがまた毛布を引きはがした。
「……おまえはみのむしか」
「……」
まるくなったまま。膝を見つめていると背後でご主人さまの動く衣ずれの音がした。
と、私の顔をのぞきこんできた。
頬を掬ってご主人さまの方を向けさせた。
ご主人さまの指はひんやり冷たくて気持ちが良かった。というか、私の顔が上気していた。
「顔が真っ赤だ」
「……」
「いいよ。本当だ。おまえは綺麗だよ」
ご主人さまが笑った。そしてそっと口づけた。
世界が拓けた気がした。
1年前とはまるで感覚が変わっていた。
今夜、私の身体はご主人さまによって作りかえられた、そんな気がした。
口づけされているうちに私はどんどん溺れてゆく。
ご主人さまの求めに応じてゆく。
私はご主人さまに抱きしめられて眠った。