『ケセナイキズナ《終編:True》』-6
『 』/2 † Reflain †
事情聴取のほか、僕たちは、多くの時間を取られた。
玲奈の両親に、僕は深く頭を下げた。愛娘をあのような時間まで連れまわし、そして、このような事件に遭わせてしまった責任からだった。
ご両親は涙を浮かべ、『良かった』と言うだけで、僕を慰めてくれるだけだった。
だが、その気遣いが、とても嬉しく、僕もまた涙を浮かべた。
一応、検査のために玲奈は病院に来ていた。僕はそれに付き添っていた。
玲奈は、逃げている最中に派手に転び、左膝に、大きな擦り傷が出来ていたためで、僕に至っては無傷だ。
その治療のために、二、三日来ていたが、あとは薬を塗っておけばいいらしく、これでもう、良い思い出のないこの病院には来なくて良いらしい。
「大丈夫かい、玲奈?」
「うん、まぁね」
「肩、貸そうか?」
「大丈夫」
外は雨が降っていた。
「うわ。この時期に雨とか、本当に笑えないね」
玲奈が、心底嫌そうに言う。
「そうだね」
僕が空を見て、そしてすぐに視線を前に移すと、見たことのある二人組みがいた。
病院で出会った、菅原君と桃ちゃんだった。その二人は、赤信号で止まっていた。
「あ」
相合傘をしていて、とても仲が良さそうだった。
「玲奈、ごめん。少し待ってて。僕の友達がいた」
「わかった」
僕は雨の中、二人に駆けて行く。
「菅原君!」
菅原君が、急に名前を呼ばれて驚いたのか、こちらを目を見開きながら、振り向く。
「あぁ……確か、瀬上君だ!」
菅原君は嬉しそうに言う。
「あの時は、あんまり話せなかったね……。退院できたんだね、おめでとう」
僕と彼が世間話をしていると、つまらなそうにしている桃ちゃんが視界の隅に入る。
「あぁ、ごめんね、桃ちゃん。彼氏を借りてしまって」
「別に、いいんです」
しかし、明らかに不機嫌そうだった。
「それじゃあ、長く話していると、彼女さんがかわいそうだから……」
僕が菅原君に言うと、菅原君は顔を赤くして、「違います!」と言う。
背を向け、玲奈のところに戻っている、最中だった。
『あの子』を、救うだけ。
聖先輩の声が、脳裏に浮かぶ。
彼は、玲奈に対しては、彼女と言っている。わざわざ、『あの子』と言っているということは、子供のこと?
誰か気付くはずだよ。君はもう、出会っているから。
子供に出会ったのは、あの子だけ。
あの子を、救わないといけない状況がくるのか?
何時?
何処?
何故?
振り返る。雨は相変わらず降っている。
このような状況は、以前にも、起きたはずだ。