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『冬の中のあたたかさと優しさ』
【青春 恋愛小説】

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『冬の中のあたたかさと優しさ』-4

「……〜ぃ、お〜い。…」なんだろう、遠くから声が聞こえる。
「お〜い。」
ん?遠くない。むしろすぐそこから聞こえる…
「起きろ〜。」
あ、つばきの声だ。そっか、私いつの間にか寝ちゃってたんだ。
私はゆっくり目を開けて顔をそっちへむけた。
「おはよ。」
「おはよう。ほら、お粥。食べられる?」
湯気がたったできたてのお粥。空腹の私にそれはすごくおいしそうに見えた。
私が頑張って体を起こしてから、つばきはそれを私に手渡した。
「なんだぁ、食べさせてよぉ?」
「そこまで甘えるんじゃないの。」
「言ってみただけ。」
言うと、つばきに頭をポンと叩かれた。
「いただきます。」
ふぅ〜、ふぅ〜、ぱく。…おいしい。
「あ、ネギが入ってる。」「なんか風邪にいいんだってさ。ちっちゃいころ風邪ひくたびこれ食べさせられてた。」
「へぇ〜。うん、おいしい。」
もう一口食べて、言った。
うん、本当においしい。あったかくて、やさしい味。つばきらしい味だな、となんとなく思った。
「それ食べたらちゃんとまた寝ろよな。」
とつばきが言う。でも
「今起きたばっかりで、もう眠くないよ。」
「それでも病人は寝てなきゃいけないの。俺もずっと居るわけにいかないし。まぁ、布団の中でじっと安静にしてればそのうち眠くなるから。」
でも、退屈なんだよね。それに、寂しい…。風邪をひいて、独りで寝ていると、まるで自分一人だけ世界から置いていかれているような、誰からも忘れられているような、そんな気分になってくる…。
「眠るまでは、そばに居てずっと看病しててやるからさ。」
そんな私の気持ちを読み取ったように、つばきは、そう言ってくれた。
嬉しくなって私は手を止めてつばきのほうを見たけど、つばきはそっぽを向いて「早くそれ食べちゃえよ。」
と言った。
私はわざとゆっくりお粥を食べた。


「ねぇ、つばき。」
布団にくるまっている私は、すぐそばに座っていてくれてるつばきに話しかけた。
「ん〜?」
「ありがとうね。つばきが来てくれて、すごくホッとした。」
「何言ってんだよ、トモダチだろ。」
そう、つばきは笑って言った。友達、というところを少しだけ強調して。
友達、か。うん、やっぱり、友達っていいなぁ。つばきと一緒に居ると本当にそう思う。
「あのね。私、つばきと友達で、本当によかったと思う。つばきと友達でいるってことが、私たまにすごく誇りに思う時があるんだ。」
「たまにかよ。」
と言ってつばきはちょっと恥ずかしそうに小さく笑った。私もクス、と笑った。「いつも思ってるよ。だからさ、ずっと友達でいてね。私つばきのこと大好きだからさ。」
「…あぁ。ずっと…友達でいるよ。きっとな。」
今日で一番優しい声で、つばきは言った。その声で、私の心がすうっと軽くなっていくのが分かる。
あぁ、やっぱりつばきはいい奴だなぁ。
「もうそろそろ寝ろ。」
つばきの大きい手が優しく髪を撫でる。
話していたから疲れてきたのかな、私も少し眠くなってきた。
「うん。でも、しばらく居てくれないかな?私が寝ちゃった後も。」
「あぁ、少しだけな。」
優しい声、優しい手。安心して目を閉じる。
少しだけな。なんて言ったけど、きっとつばきは長い間そばにいてくれるんだ。
隣にあったかい優しさを感じながら、私は安らかな眠りについた。

でも…私は全然気付いてなかった。
どうしてつばきがこんなに優しいのかも、私の言葉をつばきがどんな気持ちで受け止めていたのかも、この時の私は、何も、何も分かっていなかった…。


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