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『冬の中のあたたかさと優しさ』
【青春 恋愛小説】

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『冬の中のあたたかさと優しさ』-3

「うぅ〜ぁぁ〜〜…」
だるい。つらい。ひどい。
あまりに苦しくて、布団の中で何の解決にもならないうなり声をあげる。
もう丸一日寝込んでるのに一向に状態が回復する気配は無い。それどころか、熱は昨日測ったとき38度くらいだったのにさっき測ったら39度6分まで上がってた。
風邪。
毎年ひくんだよなぁ。冬が真ん中くらいまで来ると。
今年のは特にヒドいみたい。布団から起き上がるだけでも体の中の全部の力が持っていかれるような気がするくらいだ。
時計を見ると、短針は5の少し前をさしていた。
寝込み始めたのが昨日の午後3時くらいだから、もう丸一日以上寝込み続けてる。そしてその間一度も何も口にしていないことに気付いた。気付くと一気に空腹感が襲ってきた。いくら食欲が減退しているとはいえ、丸一日以上絶食状態となるとイヤでもおなかがすく。
「おなかへったぁ…」
と、また意味も無く呟く。何か作ろうにも、何か買いに行こうにも、それをするには今の私にはフルマラソンを完走するくらい難しいし…。
そういえば、去年はお見舞いに来てくれたんだよね、ひさぎが。ついでにつばきも居たけど。
あれは嬉しかったなぁ。ひさぎは意外と料理上手で、ひさぎが作ってくれた、なんかいろいろ野菜が入った雑炊は風邪ひきの私にも食べやすくて、すごくおいしかった。
今年はまさか来ないだろうなぁ。来るわけないよ。
はぁ…。
「バカだなぁ。」
またひさぎのこと考えた。しかもいいところばっかり思い出してしまう。
思い出は綺麗過ぎて、弱りきった私の心には逆に痛い。

ピンポ〜ン

沈んだ空気を切り開くようにインターホンの間の抜けた音が響いた。
誰だろう?と思いつつ、私は重い体を玄関まで引きずっていきドアを開けた。
「よっ。」
と、手に提げたスーパーのビニール袋を上げながら明るい笑顔で言ったその人物は
「つばき…。」
「今年も風邪ひいたんだって?コレ、差し入れ。」
そう言って私にそれを渡した。
「ありがとう。」
それを受け取ったけど、私の体はその程度の重さにさえバランスを崩すくらいに弱っていたみたい。落としそうになった袋をあわててつばきがフォローした。
「ぅゎっ、あぶね。お前、もしかして相当ヤバイんじゃねえの?」
「ん、ちょっとだけね。」「ちょっとじゃないだろ、フラフラだぞ。」
「じゃあ、結構ヤバイ。」と、突然つばきの手が私の額に触れた。冬の寒さのしみこんだ手。そういえば、手袋を借りっぱなしだった。
「かなりヤバイの間違いだろ。」
ヒンヤリとした感触が離れるとともに言われた。
「やれやれ。」
そう言って、つばきは私を支えて、ベッドまで運んでくれた。
「ありがと。」
布団の中にうずまりながらお礼を告げた。
「ちょっと看病してってやるから、おとなしく寝とけ。どうせ飯ろくに食ってないんだろ?お粥でも作ってやるよ。」
あんまりつばきが優しいから、私は少し泣きそうになった。それを隠すために、目を閉じていたら、そのうちに浅い眠りがやってきた。



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