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魔法使いの告白
【女性向け 官能小説】

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魔法使いの告白 7-4

「うっ…」

私は嗚咽を止めることができなくなった。
必死で奥底に押し込め、喉までせり上がっていたものが嗚咽とともに身体から出てゆく。
私の頭をなでて慰めてくれる。

「辛かったね。でも大丈夫…」

坂井さんの胸から微かな振動とともに響く声。
そのままじっと。
温かさと少し早い鼓動が私をゆっくりと落ちつかせてくれる。

どのぐらいこうしていたんだろう。坂井さんが腕をゆるめて私の頬に手を添えた。
くちびるが頬に優しく触れ、流れる涙を吸い取ってくれた。
私はくす。と笑った。

「笑いましたね」
「シロがね、同じことしてくれました」
「シロめ。やるな」

屈託のない笑顔。可愛いなんて思ったりして。

「でも、私なんかで良いのですか?」
「あなたが良いです」

綺麗な瞳。

目を閉じるとくちびるが合わさった。
長いキス。くちびるが離れると私たちは目を合わせて笑った。
おちついた端正な顔立ちは大人を感じさせる。こんな顔を普段は隠してるなんて。
意志の強そうな目が私を導く。
ドキドキする。

この人、魅力的に見える角度とか表情とか、自分でよく分かってるのかも。
そうよね。
でも、それが、全然嫌味じゃなくて。
かっこいい。でもね、いつもの坂井さんも好きよ。
真面目なシーンのはずなのに私は笑いがこみ上げてきた。
みかさんが坂井さんに言ったという言葉を思い出して。

「ふふふ。誑し込み中ですか?」
「人聞きの悪い。魔法をかけているんです。他の男なんか見向きもしないように」

細めた目が優しい。
クールで格好良い坂井さん。きっと誰だって彼を好きになる。
魔法にかかってゆく。
抱きしめあって。何度もキスをされて。何度も目を合わせて。
ソファーから抱え上げられそうになって、立ち上がって逃げた。

「あ。と…。シャワー浴びてきます」

だって、私重いんだもの。でも、全然嫌じゃないの。
坂井さんが私を見上げ、苦笑してソファーに座り直した。

「待ってて…」

坂井さんの肩に手を置くと私は身体をかがめた。意を汲んでくれた坂井さんが少し上を向いて合わせてくれる。
坂井さんに口づけた。私から。

坂井さんが笑う。

「詰めが甘い、ですかね」

バスルームに入る前に、そんなことを言っていた気がする。


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