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魔法使いの告白
【女性向け 官能小説】

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魔法使いの告白 1-1

玄関のドアを開けた。
私は北野美里。アパート2階の角部屋に住んでいる。

眼下には犬小屋。と、ボサボサ頭のグレーのスウェット。
大家さんがシロという犬を飼っているのだが、彼がシロと遊んでいるのをよく見かける。
シロを連れて近所を散歩しているのも見かける。
彼は私と同じアパートの住人で坂井さん。
20代、もしかしたら30代だと思うのだけど、いつもラフな格好をしている。
何の仕事をしているのか不明。

「ああ、北野さん、お出かけですか?」
ボサボサ頭がシロの前足を持ち上げたままこちらを見て言った。
「ええ、ちょっと」
私は愛想笑いで答える。
「いってらしゃい」
ぼさぼさ頭が人なつっこい顔で手を振った。





久々のデート。
映画館の前で待ち合わせ。

「待った?」
「いや?今来たとこ」

孝文とは大学で知り合いつきあい始めた。
もうすぐ2年になる。

「何見る?」
「見たいのある?」

孝文は大抵質問を切り返してくる。
たから、私はコメディを選ぶ。

「お前、ホント、そういうの、好きだよな」
「うん」
私は少し微笑んで見せた。

ホントはシリアスな映画も好きだけど、そういうのは1人で見たいだけ。
なにもかも置いて、なにも気にせず、感情移入したいから。

彼は席を立った。
ジュースとポップコーン、パンフを買ってくるためだ。
自分が1人でいくときには何も買わない。
見る前か後かになにか食べたりはするけど。
当たり前のように買いにいく孝文を不思議な気分で見ている。
これがデートというものかしらね。と思った。

「ねえ、会社忙しい?」
ジュースとパンフを受け取りながら、(特に頼んだ訳ではないけど、恒例になってしまっている)尋ねた。
「まあね。今は研修が多いけどね、美里は?」
「私も、そこそこ、かな。閑な時もあるんだけどね。忙しいときと閑な時の差が激しくて」

ブー。

上演開始のブザーが鳴って私たちはおしゃべりを止めた。





黙って座っていれば1時間強がつぶれてしまう映画館デート。
最近は2人のスケジュールが合わなくて、ひさしぶり。
定番中の定番と言えど、これはデートといえるのかしら。なんて。
遊ぶとこがそんなにないってのもわかる。
じゃあ、どこに行きたいんだよ?って聞かれたら別になくて。
映画は好きだから、まあいいか、って。


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