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魔法使いの告白
【女性向け 官能小説】

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春告鳥 3-5

「失礼な。いじめませんよ」

美里さんが笑い出す。

あとで聞いたら僕と大家さんの掛け合いが漫才みたいだったそうで。

「じゃあね」

大家さんがそういって自転車に乗った。
美里さんが笑って手をふる。
僕も苦笑いで手をふる。

全く、人を悪人みたいに言わないでほしいなあ。
大家さんに悪意がないのはわかってるんだけどさ。

「大家さんと仲がいいんですね。びっくりしました」

僕から話し出してしまったことが引っかかっているのだろう。

「まあ、母の代からの店の常連さんみたいなものですから、隠しようがないんです。オンナノコ連れて、この時間に、この格好ってのは、ね。取り繕えないです」

僕はコートの襟元をバサバサと煽ってみせる。

「そうなんですか」

彼女も納得したようだった。

「やっぱり、嫌でした?」
「んーと。ちょっと恥ずかしかったけど、ここが苦しくなくなったのでいいです。変な言い訳しなくていいんですよね?」

彼女は自分の胸を押えて言った。

僕は返事のかわりに、ぽん、と背中を軽くたたいた。
春を呼び込むような笑顔が僕を幸せにした。

まだ寒い。

それでも空は晴れて、美里さんの顔も明るい。

美里さんがそばにいる。抱きしめようとすればすぐにでも。

ほっとしているのかな。眠い。まあ、当然か。

アパートの階段を上がって自分の部屋の鍵をあける。

「少し、眠いです」

といったら、美里さんが微笑んだ。

「おやすみなさい」

扉の影で美里さんが伸び上がって僕の頬にキスをくれた。

ぱたん。

扉は閉って。彼女の姿は見えなくなった。

眠れるのかね? こんなに浮かれて。今晩も仕事なのに。
と、思ったが、そんな心配は全然いらなかった。爆睡。

fin.


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